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連載・特集

日露首脳会談を前に <3> 山口日露交流クラブ代表 上田エカテリーナさん=山口市

文化交流へ魅力伝える

 北海道などロシアに近い地域に比べて、山口県は経済・文化面のつながりが薄く、県内でロシア人に出会うことはほとんどない。でも、ロシアに興味を持ってくれている日本人は山口にもいる。お互いの文化交流のきっかけになればと、2005年に山口日露交流クラブをつくった。

 法務省によると、6月末現在で全国の在日ロシア人の数は8205人。うち山口県在住は22人で、中国地方5県(計212人)では島根の次に少ない。

 クラブではロシアの料理教室や語学講座を開いている。私の古里のロシア南西カルーガ州でのホームステイも企画した。日本の人たちの多くがロシアに対して抱く「寒い」「怖い」といったイメージを変えて、ぜひ現地を訪れてほしい。

 1991年にソ連が崩壊。2000年にプーチン大統領が就任した。憲法で3選が禁止されているため一度大統領を辞して首相に就き、12年に再び大統領に選ばれた。

 11歳の時、ソ連が崩壊した。学校の道徳の授業も共産主義教育から宗教の授業に替わり、混乱したのを覚えている。親は働いても賃金がもらえず、家の畑で作った野菜で食べつないだ。治安も悪かった。プーチン大統領の就任後は、留学先から帰るたびに道路など街の整備が進んでいると感じた。厳しい、強いイメージの大統領だが、崩壊後の混乱をまとめ、経済を前進させた点で国民から尊敬されている。

 安倍晋三首相は今回の会談での北方領土問題の解決には難しさをにじませる一方、プーチン大統領とともに「共同経済活動」の議論を進める考えを示した。

 今回の首脳会談で、日本とロシアが行き来しやすくなったり、経済協力がもっと進んだりすれば日ロの文化的な交流も盛んになる。開催地の長門市から、会談前後に大西倉雄市長がプーチン大統領にあいさつする際の通訳を依頼された。大役のプレッシャーもあるが、しっかり果たしたい。

 山口県は幕末、明治にかけて大きな役割を果たし、総理大臣を輩出した。京都まで行かなくても、山口市には国宝の瑠璃光寺五重塔や国史跡・名勝の常栄寺雪舟庭が、防府市には防府天満宮がある。海に行くことが少ないロシアの人は下関市の角島の美しい海をきっと気に入るはずだ。母国の人たちにも、魅力を伝えていきたい。(原未緒)

うえだ・えかてりーな
 ロシア・カルーガ州出身。ロシア国立教育大言語文学部で、文学、英語、ロシア語の教員免許を取得し卒業。2003年に来日し、06年、山口県立大大学院国際文化学研究科に入学。修了後、NHK文化センターのロシア語講師などを経て08年に山口市で英会話教室を開いた。宇部フロンティア大短期大学部非常勤講師も務める。

山口日露交流クラブ
 2005年秋に山口市で発足。クラブ員は20~80代の15人で、ロシア料理教室やロシア語、文化の勉強会のほか、1986年に旧ソ連のウクライナで発生したチェルノブイリ原発事故の後遺症に苦しむ子どものためのバザーも毎年実施し、収益金を寄付や子どもへのプレゼントに充てている。

(2016年12月8日朝刊掲載)

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