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沖縄負担減 高いハードル 岩国市議会議長ら 現地で初協議

 岩国市議会の桑原敏幸議長が代表世話人を務める任意団体「沖縄の基地負担軽減を考える議員有志の会」が3日、沖縄県内で初めての協議会を開いた。沖縄に集中する米軍基地について、「負担を分かち合うことが重要」として、活動の全国展開を誓う決議文を採択した。近く政府にも支援を要望する。本土側と沖縄が議論を深める一歩だが、軽減実現のハードルは高く、活動の継続が課題となる。 (野田華奈子)

 「腹を割ってやっていきましょうや。本土でできることは全面的に協力します」。那覇市の県青年会館で開いた協議会。全国17市町村から集まった議員約50人を前に、桑原議長は熱意を伝えた。会場には趣旨に共鳴する和木、周防大島両町議会議長たちの姿もあった。

 自民党沖縄県連会長を務める照屋守之県議はあいさつで、「全国が沖縄を心配する思いをあらためて感じた」と話した。背景には、県内に全国の米軍施設(面積)の74%が集中する事実と、沖縄が抱える本土との物理的、精神的な「距離感」がある。

呼び掛けて10年

 桑原議長が中心となり、地方議会に賛同を呼び掛けて約10年。有志の会は、「世界一危険な基地」とされながら日米合意から20年を経ても返還が実現しない米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の危険性除去を念頭に、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの訓練分散などを想定する。

 ただ、実際の運用は米軍の事情が優先される上、負担の受け入れ先に挙がる本土側の住民の理解を得るのは容易ではない。桑原議長は「まず沖縄と本土が一緒に考えれば、道は開ける。その後は国と米軍の話」とし、地方議員レベルでの協議の限界もにじませた。負担に見合う国の支援策の必要性も指摘した。

 日米共同訓練でも使う航空自衛隊新田原基地のある宮崎県新富町からは、同町議会の長浜博議長が参加した。防衛省が基地周辺の住宅防音対策の対象区域縮小を打ち出し、国への「疑念」が膨らむ中での出席。それでも、負担軽減に心を砕く根底には、「自分たちの国は自分たちで守る国防への思いがあるからだ」と説明した。

相互理解に期待

 沖縄での協議会開催を提案した宜野湾市議会の大城政利議長は「すぐに成果を出すのは厳しい」としつつ、「地道に取り組む中で沖縄の過重な負担や県民の思いを知ってほしい」と基地問題の相互理解に期待を寄せる。

 沖縄国際大の前泊博盛教授(基地経済論)は「協議の場ができたことは評価できる」とする一方、「負担軽減に不可欠な『米国』不在では、いくら議論してもノーと言われれば白紙になる」と指摘。米軍関係者と渡り合える政治家や官僚の存在も必要としている。

沖縄の基地負担軽減を考える議員有志の会
 岩国市議会の桑原敏幸議長が代表世話人となり、5月に発足。全国の主に在日米軍・自衛隊基地を抱える自治体の議員有志でつくる。北海道千歳市や青森県三沢市、鹿児島県鹿屋市など全国15市町議会(中国地方は柳井、大竹、東広島、米子、境港の5市議会と和木、周防大島両町議会)の議長が世話人を務める。

(2016年12月8日朝刊掲載)

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