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「黒い雨」援護地域拡大 否定的 報告書を近く提出へ

 広島原爆による「黒い雨」被害の援護対象となる国の指定地域見直しで、厚生労働省の有識者検討会は9日、省内で第9回会議を開き、報告書をまとめた。広島県、広島市などが要望する約6倍への地域拡大には根拠がないとする一方、黒い雨体験者に精神面での不調を認めた。近く、同省に提出する。

 厚労省は8月6日の広島原爆の日を念頭に、拡大の是非を含めた対応を検討する。

 検討会は市などが拡大根拠とする調査報告を2010年12月から科学的に検証してきた。この日は、5月29日の前回会議で大筋了承した報告書案の表現の一部を修正した。

 健康影響については、黒い雨を体験したと訴える人は精神的な健康状態が悪い▽原因は黒い雨による被曝(ひばく)への不安や心配で説明できる可能性がある▽体への影響は市の調査設計では評価が困難―などとした。降雨域も、データ不足などを理由に「確定できない」と指摘した。

 これらから、市の調査結果では要望地域での「原爆放射線による健康影響の合理的根拠とはならない」と結論付けた。黒い雨体験者には「不安軽減のための相談などの取り組みが有用」と付記した。

 傍聴した上安・相田地区黒い雨の会(安佐南区)の吉田良文副会長(74)は「被害の実態を確かめようという姿勢が全くない」、県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会の高野正明会長(74)も「不完全な内容で憤りを感じる」と批判した。

 報告を受けた広島市の松井一実市長は「市にとって非常に厳しい内容。検討会の結論を超えた政治的判断が必要になる」とし、拡大へ県などと要望を強める意向を示した。(岡田浩平、山本洋子)

(2012年7月10日朝刊掲載)

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