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遺品が語る被爆者の思い 写真絵本出版

 広島を拠点に活動している米国出身の詩人アーサー・ビナードさん(45)が、原爆で亡くなった人たちの遺品に光を当てた写真絵本「さがしています」を20日に出版する。(増田咲子)

 B5判、32ページ。取り上げた遺品は、炭化したご飯と緑豆の入った少女の弁当箱や、少年が被爆時に身に着けていた学帽など14点。フォトグラファー岡倉禎志さん(49)=東京都世田谷区=の写真に、遺品が語りかけているような文章を添えた。

 ビナードさんは、遺品を主役にした絵本を執筆しようと、東日本大震災の後、広島市中区に住まいを構えた。広島の街を歩き、被爆者の話を聴いた。遺族にも会った。「ピカドンを体験した『語り部』である14の遺品と対話をして、声が聞こえてきた」という。

 例えば、眼鏡は「ウランの 核分裂を はじめたら どうやって おわりに できるか…… さがしているけど 見えないんだ」。鍵束は「ほんとうに とじこめなきゃならないのは ウランじゃないか…… おれたちは やくめを さがしてるんだ」。

 ビナードさんは「ヒロシマは過去の出来事ではなく、今につながる問題。『おはよう』『いただきます』と言葉を交わせる日常生活を奪った核分裂と、フクシマで起きている現象は同じだ」と話す。

 税別1300円。童心社(東京都)。

(2012年7月10日朝刊掲載)

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