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社説・コラム

社説 もんじゅ代替 核燃サイクル 先見えぬ

 転んでも、ただでは起きない気だろうか。政府と原子力業界のことだ。トラブル続きで「金食い虫」とやゆされた高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)を廃止する代わりに、より実用化に近い実証炉を整備する計画を進めようとしている。

 もんじゅについては、政府が9月に「廃炉を含めた抜本的見直し」を表明していた。20日にも関係閣僚会議で正式決定する。これまで1兆円を超す税金を投じながら、ナトリウム漏れ事故などでまともに稼働していなかった。廃炉は当然の結末で、むしろ遅すぎたぐらいだ。

 原発の使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再び使用する核燃料サイクルの中核施設である。資源の乏しい日本にとって、「夢の原子炉」という触れ込みだった。

 確かに難しい技術で、ドイツや英国は核燃料サイクルから撤退している。日本もこれを潮時とするか、もしくは当分の間は手を引くのも考えられた。

 ところが全く別の道を示したのが政府の高速炉開発会議だった。先日の骨子案では一歩進んで実証炉の開発に踏み込んだ。

 原子炉は一般的に実験、原型、実証、商用の段階を踏む。原型炉のもんじゅでさえ満足に使いこなせないのに、「次段階となる実証炉の設計開発に着手できる技術がある」としたのは理解できない。

 来年から開発の工程表策定に取り掛かる。フランスが2030年ごろ運転開始を目指す高速実証炉「ASTRID(アストリッド)」に協力し技術を活用するというが、当の仏側機関は最終決断に至っていない。

 高速炉開発会議は名称からして、結論ありきだったと思えてくる。経済産業省や文部科学省、原子炉メーカーや電気事業連合会など、核燃料サイクルの維持や原発存続を求める役所、企業が顔を並べた。会議は非公開で、とても国民の方を向いているとは言えなかった。

 なぜ、ここまで高速炉に固執するのか。

 電力会社にとって核燃料サイクルが断念となれば、使用済み核燃料は単なる「ごみ」と化す。会計上の資産が一転して処理に金がかかるお荷物になるからだ。青森県六ケ所村で保管中の使用済み核燃料も再処理が前提で、それが困難となれば県外搬出を迫られることになろう。

 政府や電力会社としては、パンドラの箱を開けたくないのが本音に違いないが、手前勝手な理屈では、核燃料サイクルの延命に国民の理解は得られまい。

 生み出されるプルトニウムは核兵器にも転用できる。既に、わが国は原爆6千発分に相当する48トンを保有する。使う見込みがないのに大量に抱え込むのは核不拡散上、極めて不適切と国際社会から疑念が向けられている。プルトニウムを加工した混合酸化物(MOX)燃料を用いるプルサーマル発電も使用済み燃料の処理法がなく、燃料プールにたまり続けている。

 福島第1原発事故を受け、安倍晋三首相は「原発依存度を可能な限り引き下げる」と誓ったはずだ。それしか道はない。核燃料サイクルに限らず、原発というビジネスモデルが既に破綻しているのは明らかだ。いま本当に必要なのは、再生エネルギーの普及や原発廃炉など、未来につながる投資ではないか。

(2016年12月13日朝刊掲載)

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