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戦時下の日常異例のヒット 「この世界の片隅に」公開1ヵ月 観客4週連続増加/上映200館突破へ

 12日で公開から1カ月のアニメーション映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)が、異例のヒットを見せている。週末の観客動員は4週連続で伸び続け、上映館は封切り時から3倍以上になる見通し。人気が原作漫画にも波及するなど反響が広がる。(石井雄一)

 「この世界の片隅に」は、広島市出身の漫画家こうの史代さん(48)の同名漫画が原作。戦中、戦後の広島や呉に生きた主人公の女性すずたちの日常を細やかに切り取っている。

 配給元の東京テアトルや興行通信社によると、封切り上映は63館と控えめだったが、ツイッターなど口コミで話題になり、土・日曜の観客動員は4週連続で前週を上回った。上映の申し出が相次ぎ、計200館を超える見通しだ。

興収6億円迫る

 公開中の作品の観客動員で、1週目の全国10位から4週目には4位まで上昇。大型の新作の公開と重なった5週目の10、11日も前週を超える観客が訪れ、7位にランクインしている。

 11日現在で計43万9307人が鑑賞、興行収入は6億円に迫る。社会現象になったアニメ映画「君の名は。」には遠く及ばないものの、戦時下の日常という派手さとは対極のテーマの作品では異例のヒットといえる。

原作5回の重版

 映画の舞台となった広島県内の映画館も、幅広い世代でにぎわう。T・ジョイ東広島(東広島市)は、2週目の土日の売り上げが上映作品中1位に。広島バルト11(府中町)は、4週目の一部時間帯を座席数の多い劇場に切り替えた。

 8日夜、片渕監督が舞台あいさつした八丁座(広島市中区)で鑑賞した会社員秋山幸子さん(25)=安佐南区=は「戦争映画だけどすごく新鮮。女性の目線で共感できた」と話す。片渕監督は「映画を見た方が自らの記憶や体験と結び付け、『化学反応』が起きているのでは」と喜んだ。

 反響は原作漫画にも及び、発行元の双葉社によると、公開直前に50万部だった部数は公開後、計5回の重版で年内に90万部を突破するという。欧米など海外15カ国での上映が決まるなど、快進撃は今後も続きそうだ。

(2016年12月13日朝刊掲載)

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