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長門の商店「特需」 あすから日露首脳会談 視察見送りには落胆

 安倍晋三首相がロシアのプーチン大統領を地元の長門市に迎える首脳会談が15日に迫った。市内ではロシア政府や警備を担う山口県警の関係者の姿が目立ち、警戒ムードが高まる。多くの人の来訪で、市内のスーパーでは菓子や酒が一時、品切れとなるなどの特需が発生。13日には両首脳が市内を視察しないとの日程が明らかになり、市民たちからは落胆の声も漏れた。

 長門市仙崎のスーパー「フジ長門店」では12日夕、ロシア人とみられる約30人が訪れ、菓子や酒、しょうゆなどを一斉に購入。日本酒風味の菓子や国産ウイスキーがほぼ品切れとなった。「お薦めの日本酒などを聞かれた。お土産にするのかも」と藤方良淳店長(39)。15日は通常の約2倍の弁当を用意する。

 市内のタクシー会社では予約が相次ぐ。長門山電タクシーは、大型の2台と、10台ある小型の半数が予約で押さえられた。上本達也社長(51)は「当日は稼働率が100%になるのでは。創業以来初めて」と驚く。

 プーチン氏は15日午後、会場の温泉旅館に入る。安倍首相と2度の会談に臨むが、県と市が求めてきた市内の視察は見送りが決まった。市は市民約千人が沿道に立ち、両国の旗を振って到着を歓迎するイベントなどを企画している。

 視察先の候補に挙げた一つは、日露戦争時に両国兵士の遺体が引き揚げられた通(かよい)の海岸にある日本兵とロシア兵の墓だった。地元の君川歌子さん(79)は「がっかりしたが、警備の難しさなどがあったのだろう」と話した。(原未緒)

雨の中 厳重警備 湯本温泉周辺

 会談の場とされる長門市深川湯本の湯本温泉周辺では13日、同温泉を流れる音信川(おとずれがわ)周辺や建物の屋上では雨の中、警察官が不審者や不審物の警戒に当たった。赤色灯をつけた警察車両が国道316号沿いや市街地をパトロールした。

 JR西日本広島支社はこの日までに、JR美祢線沿線の会場周辺の駅に防犯カメラを設置。美祢線や山陰線の一部の駅で構内のごみ箱を撤去しロッカーの使用を停止している。15、16日は美祢線の美祢―長門市間で一部に運休や遅れが出る可能性があるという。

 県警は15、16日、長門、美祢、宇部市などの国道や高速道で5~30分の交通規制をする予定。湯本温泉を通る路線バスや山口宇部空港(宇部市)と新山口駅(山口市)を結ぶバスに遅れが出る可能性がある。(原未緒)

(2016年12月14日朝刊掲載)

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