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ロシアビジネスどう展望 山口県内の関係企業経営者らに聞く あす長門で日露首脳会談

知名度アップ期待/店舗拡大の糸口に/ブランド力を強化

 安倍晋三首相(衆院山口4区)とロシアのプーチン大統領は15日に長門市で会談をした後、16日には東京に移動して経済協力に重点を置く協議に臨む。県内にも製品の輸出や拠点の開設でロシアとつながりのある企業や事業所がある。経営者たちは首脳会談にどんな成果を期待し、ロシアビジネスをどう展望しているのだろうか。(宮野史康、村田拓也)

 「ロシアでは、山口はほとんど知られていなかった。プーチン氏が訪れた県となれば、今後の商談で話題にできる」。食品機械製造のヤナギヤ(宇部市)の柳屋芳雄社長は、首脳会談による知名度アップに期待する。

 「カニかま」で親しまれるカニ風味かまぼこの製造機械で、世界シェアの7割を握るトップメーカー。ロシアには、旧ソ連時代の1982年に初めて輸出した。同年の韓国に続く取り組みだった。

「事業協力も」

 同社によるとソ連への輸出は、77年の日ソ漁業権交渉にさかのぼる。ソ連はサケ・マス漁に協力する見返りとして、当時日本でブームだったカニかまの製造機械の輸入を要求。日本の大手商社がヤナギヤ製品を推薦した。

 ロシアでは現在、水産加工3社で4ラインが稼働する。今月末には4社目の出荷を計画し、本社工場には真新しい機械がある。柳屋社長は「会談で、例えば水産資源の豊富なロシア極東で水産加工場を造ろうという話が出てくれば、協力できる」と推移を見守る。

 ファーストリテイリング(山口市)は完全子会社を通じて、ロシアの首都モスクワとサンクトペテルブルクでカジュアル衣料品店「ユニクロ」14店を運営する。1号店は2010年4月、モスクワにオープン。日本のファッション企業がロシアに直接出店した初の事例だったという。

 今後も徐々に店舗数を増やす計画。古川啓滋広報部長は「出店に適した物件を探す担当者が、所有者たちと交渉する時の会話の糸口になるだろう」と語る。

 宇部興産(宇部市)は、自家発電設備の燃料にしたり、電力会社に販売したりする石炭を、ロシアから輸入している。本年度の取引量はオーストラリア、インドネシアに続く3番目の多さを見込む。

「重要な市場」

 防府市に防府工場を構えるマツダ(広島県府中町)は12年10月、ロシア極東ウラジオストクで自動車の組み立てを始めた。ロシア自動車大手ソレルスとの合弁で、スポーツタイプ多目的車(SUV)「CX―5」と中型車「マツダ6(日本名アテンザ)」をこれまでに約10万台生産した。

 同年9月の開所式にはプーチン氏が駆け付け「日本とロシアの相互利益となる非常に重要なプロジェクトだ」と歓迎した。ことし9月には合弁会社が、隣接地にエンジン工場を建てる契約をロシア政府と締結した。マツダは「重要な市場で、ロシア政府の支援も受けながらブランド力を高めたい」としている。

山口県とロシアの経済交流
 県貿易統計によると、2015年の県内7港(岩国、平生、徳山、防府、宇部、萩、下関)からのロシアへの輸出額は95億4600万円。ルーブル安に伴うロシア経済の低迷などで、14年比68・7%減と落ち込んだ。自動車が総額の9割超を占める。輸入額は250億2100万円で、46・9%減。石油や石炭など鉱物性燃料が9割近くに達する。県は、県内企業とロシアの経済交流はこれまであまり進んでいなかったとみて、日ロ首脳会談をきっかけに活発化したい考えだ。

(2016年12月14日朝刊掲載)

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