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岸から80メートル 機体散乱 オスプレイ大破 怒る沖縄 現場で抗議

 陸からすぐの浅瀬で大破した機体が見つかった。沖縄県で13日夜に起きた米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイの不時着。名護市の発見現場は物々しい雰囲気に包まれ、知事は「墜落だ」「とんでもない出来事」と怒りをあらわに。住民は「いつ犠牲者が出るか分からない」と不安を募らせた。現実となった安全性への懸念。稲田朋美防衛相は「墜落ではない」としたが、関係自治体からは原因究明を求める声が上がった。

 ちぎれたプロペラ、折れた尾翼―。オスプレイは胴体部分がバラバラに大破し、海面で無残な姿をさらしていた。事故から一夜明けた14日、沖縄県名護市の海沿いにある岩場には機動隊員と米軍関係者ら数十人が立ち並び、規制線を張った。周辺を基地反対派の住民らが取り囲むなど、怒りと抗議の声が広がった。

 14日早朝、現場付近に続く道路は一時封鎖され、機動隊員が「危険です」と報道陣を押し返そうとする場面も。上空は県警のヘリコプターが飛び交い、一帯が物々しい雰囲気に包まれた。

 事故機はコックピットのガラスが割れ、胴体部分は海水に漬かった状態。尾翼は波に流され、岩場に乗り上げていた。迷彩服姿の米軍関係者らが、1~2メートルほどある灰色の破片を陸上に引き上げて写真を撮ったり、沈んだ機体をゴムボートから調査したりした。規制線の外側では100人以上の住民らが「オスプレイ配備撤回しろ」とシュプレヒコールを響かせた。

 機体は岸からわずか約80メートルの浅瀬で見つかった。米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古からも湾を一つ挟んだだけの場所だ。移設に抗議活動を続ける田仲宏之さん(44)はオスプレイの安全性が以前から懸念されていたことに触れ「起こるべくして起きた事故。普天間でも辺野古でも、危険性は全く変わらない。人が生活する地域に配備してはいけないものだ」と語気を強めた。

 市民団体「ヘリ基地反対協議会」共同代表の安次富浩さん(70)は「事故の危険性は沖縄だけではなく、全国各地に広がっていることを知ってほしい」と訴えた。

 オスプレイの運用が予定される米軍北部訓練場の周辺でも住民らが抗議。付近の東村高江に住む伊佐育子さん(56)は「住民は常に墜落の恐怖にさらされている。いつ犠牲者が出るか分からない」と話した。

海保が捜査着手 地位協定の壁も

 垂直離着陸輸送機オスプレイが沖縄県名護市沿岸に不時着した事故で、第11管区海上保安本部(那覇)は14日、航空危険行為処罰法違反容疑での捜査に着手した。ただ、米軍は捜査の受け入れ要請に回答しないまま機体の回収作業を実施。日本側の警察権を制約している日米地位協定もあり、原因究明に十分に関与できない懸念が残る。

 11管は14日未明、捜査の受け入れを口頭で求めたが、同日夕まで回答がなかった。一方、現場では米軍関係者が大破した機体の一部を、ゴムボートを使って回収した。11管は民間船舶の立ち入りを防ぐため、現場付近に巡視船・艇を1隻ずつ配置したが、調査は目視での状況確認や写真撮影にとどまった。

 日本側が主体となった原因究明の壁になる恐れがあるのが、日米地位協定の刑事裁判権についての規定。関連する合意文書では、米軍の「財産」について「日本の当局は捜索、差し押さえ、検証を行う権利を行使しない。ただし、米軍側が同意した場合は、この限りでない」と定めている。

 米軍普天間飛行場に隣接する沖縄国際大で2004年に起きた米軍ヘリコプターの墜落事故では、米軍は地位協定を盾に県警の現場検証を拒んだ。

原因究明の徹底要請 岩国市など関係自治体

 沖縄県沖で米軍普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機オスプレイが海上に不時着した事故を受け、オスプレイが頻繁に飛来する米海兵隊岩国基地のある岩国市や山口県など関係自治体は14日、原因究明と再発防止策の徹底を米側に要請するよう国に求めた。相次ぐ米軍機の事故に、基地強化に反対する市民団体は強まる不安を訴えた。

 県と市には14日午前、中国四国防衛局の職員が事故概要を説明。応対した担当者は、原因究明と再発防止策の徹底などをそれぞれ要請した。同様に説明を受けた広島県は飛行停止を求め、大竹市は市議会全員協議会で国の説明を伝えた。

 オスプレイは給油などで岩国基地に1~6機が頻繁に飛来。岩国市に通知があっただけで2014年は39回、15年は23回、16年は8日までで35回に上る。

 岩国基地に関わる米軍機の事故は9月、AV8Bハリアーが沖縄本島沖で墜落。10月には、配備計画のある最新鋭ステルス戦闘機F35Bが米国内で出火事故を起こし、山口県と岩国市は受け入れを留保した。今月7日には同基地所属のFA18ホーネット戦闘攻撃機が高知市沖で墜落して乗員が死亡し、県市は再発防止を要請したばかりだった。

 岩国市の福田良彦市長は「大変遺憾。事故への市民の不安が募っており、全ての航空機の安全な運用を求める」と強調。村岡嗣政知事は「国も今まで以上に問題意識を高く持ってほしい」と注文した。同基地へのF35Bの配備受け入れについては、ともに「切り離して判断する」とした。

 廿日市市の市民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」は14日、岩国基地への飛来中止と国内配備禁止を求める緊急要請書を首相官邸や同基地などに送った。

(2016年12月15日朝刊掲載)

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