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長門で日露首脳会談 準備大詰め 厳戒と歓迎 誘導手順確認/生徒ら考案パン販売

 日ロ首脳会談を翌日に控えた14日、長門市の湯本温泉では警備車両がひっきりなしに往来し、宇部市の山口宇部空港には警察車両が乗り入れるなど厳戒態勢で準備を整えた。長門市の高校では、生徒が考案した「ロシアパン」を販売。国内外から多くの報道陣を受け入れる同市の施設では、県と市が観光PRブースを設けた。

 会談の会場とされる長門市深川湯本の温泉旅館では、外務省やロシア政府の関係者とみられる人物を乗せた車両が頻繁に出入りした。旅館入り口につながる道には数人の警察官が常駐して周辺を警戒するなど、厳しい警備態勢が敷かれた。

爆発物捜索犬も

 警視庁の爆発物捜索犬であるシェパードとラブラドルレトリバーも出動し、旅館周辺に不審物がないかを確認した。街宣カーが付近を周回し、ものものしい雰囲気に包まれる場面もあった。

 山口宇部空港では、県警のパトカーなど車両約10台と白バイ3台が駐機場に入り、大統領専用機の到着を想定したかのように約1時間かけて誘導手順を確認した。白バイやパトカーなど数台が車列を組んで、空港を出発する様子も見られた。

 長門市日置上の大津緑洋高日置校舎では、3年の木村風緩(かざひろ)さん(18)、中村蓮さん(18)、前田未羽さん(18)が授業で考案した「ロシアパン」を1個100円で売り出した。地域住民たち約70人が訪れ、手に取ったり興味深そうに眺めたりして、次々と買い求めた。

 伝統的な黒いライ麦パンとは異なり、現地の若者に好まれているという小麦を使った軟らかい食感が特徴。溶かした砂糖を薄く塗って仕上げた。前田さんは「地域の人が、ロシアに親しみを持つきっかけになればうれしい」と笑顔だった。

名所紹介パネル

 県と長門市は、報道陣の待機場所となる市内の施設に130平方メートルのブースを設けた。錦帯橋(岩国市)などの観光地を紹介するパネル15枚を掲示。ロシア語や英語の観光パンフレットも並べた。

 ういろうや鶏卵せんべいなど約20種類の試食品と飲み物を用意した。県産ブランド地鶏「長州黒かしわ」などを炭火で焼いた焼き鳥400本も振る舞う。(原未緒、宮野史康、村田拓也)

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手応えや意気込み聞く

 日ロ首脳会談の開催準備や国内外への情報発信を進めてきた村岡嗣政知事と長門市の大西倉雄市長に、手応えや意気込みを聞いた。

県食材のおいしさ発信 知事

 ロシアのプーチン大統領を15日、空港でお迎えする。日本に着いて最初に降り立つ場所なので、まずは「山口にようこそ」と歓迎の気持ちを伝える。滞在先では県産食材のおいしさを感じてほしい。

 長門市での会談が9月に決まり、市と連携して準備をしてきた。今のところ、大きな課題はない。移動や会談が円滑に進むよう、緊張感を持って当たる。

 市と要望していた視察が実現しなかったのは残念だ。ただ、国内外から多くのメディアを受け入れるなど、魅力を発信するさまざまな機会は得られた。(村田拓也)

長門の優しい心知って 市長

 会談の開催は、国内でも知名度が決して高くはない長門市にとってまたとない機会だ。11月にロシアであったレセプションでは、元乃隅稲成神社などの観光地や特産品の魅力をアピールできた。

 市民の歓迎ムードを高めようと、ロシア語講座や料理教室を開いてきた。反応は予想以上。あちこちで関連行事が開かれている。

 15日は市内の湯本温泉周辺で、千人以上の市民とともにプーチン大統領を迎える予定だ。市出身の金子みすゞさんの詩にあるような、長門の優しい心を知ってもらいたい。(原未緒)

(2016年12月15日朝刊掲載)

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