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厳戒温泉街 歓迎の旗 日露首脳会談 到着遅れ出迎え縮小 長門

 日ロ首脳会談の舞台となった温泉旅館「大谷山荘」がある長門市の湯本温泉は15日、警備の警察官や政府関係者が大挙し、山あいは終日、物々しい雰囲気に包まれた。沿道では悪天候の中で市民約300人が出迎え、プーチン大統領は予定より2時間以上遅れて到着。市は市民への連絡や調整などの対応に追われた。(根石大輔、折口慎一郎、原未緒)

 午後6時5分、プーチン氏の専用車両など約20台の車列が大谷山荘に到着。道路端に並んだ市民は日ロ両国の国旗を振りながら歓声を上げて迎えた。ロシア語で「プーチン大統領ようこそ長門市へ」と書かれた横断幕や、安倍晋三首相とプーチン氏の似顔絵を掲げる人も。近くの会社員赤川孝昭さん(60)は「地元が温泉街として再注目され、活気が戻るきっかけになってほしい」と期待を込めた。

 山口県警はこの日、県外からの応援を含め約4100人態勢で警備に当たった。湯本温泉周辺では警察官が早朝から目を光らせ、温泉街の中心部を流れる音信(おとずれ)川のほとりも巡回して不審物の有無を確かめた。近くの商店店員荒川ますえさん(60)は「こんなに警察官が集まるなんて初めて」と驚いていた。

 ただ、肝心の会談はプーチン氏の到着が遅れた影響で、予定より2時間以上遅れて始まった。市は午前中に緊急会議を開き、出迎えの市民の集合時間を午後1時半から2時間半遅らせて4時に変更。市内の小中学校の児童生徒の歓迎も断念したため、出迎えの人数は約3分の1になった。

 市は変更を防災無線などで知らせたが、交通規制に備えて早めに自宅を出るなどして情報が届かなかった市民も。同市東深川の杉野悦子さん(64)は「昼すぎからずっと待っている。ここまで来たら歓迎したい。一体いつになるのか」と戸惑いを見せる場面もあった。

明治創業の高級旅館 会場の「大谷山荘」

 日ロ首脳会談の開催場所「大谷山荘」は、長門市の湯本温泉にある高級旅館。1881(明治14)年創業の老舗で、周辺には昔、付近にある寺の修行僧が泊まる宿坊があった。

 関係者によると、安倍晋三首相も、支援者との集会などで度々利用。客室数111室の8階建て本館と、2006年にオープンした高級路線の3階建て別邸の2棟からなる。別邸は、18の客室全てに専用の露天風呂があり、ゆったりとしたプライベート空間を演出。館内には、宿泊客が抹茶で一服する茶室などもある。アルカリ性の温泉は、肌の角質を落とす効能があることから「美肌の湯」と言われる。

国内外記者に特産品をPR 長門市など

 国内外の報道陣の待機場所が設けられた長門市仙崎の文化施設ルネッサながとには15日、大勢のメディア関係者が詰め掛けた。会場には同市と山口県が観光地をPRするパンフレットや特産品を用意しており、県の魅力にも触れた。

 試食コーナーには、かまぼこやういろうなど約20種類が並んだ。長門やきとり横丁連絡協議会は、炭火で焼いた焼き鳥を振る舞った。民放テレビ局系列のモスクワ支局記者、イーゴリ・ガブリロフさん(44)は、めんたいこ入りのかまぼこが気に入った様子で「ビールに合いそう」と喜んだ。

 日ロ首脳会談について、香港フェニックステレビの李淼(リ・ミャオ)東京支局長は「首相が地元に要人を招くのは特別なこと。日ロ両国以外でも関心は高い」と語った。

(2016年12月16日朝刊掲載)

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