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日露首脳会談 関係者 思いそれぞれ 

「返還」進展を願う 元島民2世/交流続け「仲良く」 抑留経験者

 長門市で15日に始まった日ロ首脳会談に、山口県で特別な思いを抱く人がいる。両親が北方領土の元島民の女性、シベリア抑留の経験者や遺族。安倍晋三首相(山口4区)の地元で交渉の席に着いたプーチン大統領に、4島返還や友好の発展への期待を寄せた。(佐藤正明、加田智之、長久豪佑)

 「到着が遅れてやきもきしたけど、わくわくする。返還などの話が進んでほしい」。歯舞群島の勇留島(ゆりとう)の元島民2世の主婦河野良子さん(69)は山口市吉敷下東の自宅で、午後5時、プーチン氏が宇部市の山口宇部空港に降り立つテレビ中継に見入った。

 約40年前、夫の克彦さん(72)の郷里山口市に移った。「これまで子育てや生活に大変だった。島にはまだ行ったことがない。今回の交渉で制限なく行けるようになれば」と話した。

 雑貨店を営む両親と兄や姉の計9人が島で暮らし、1946年4月に北海道根室市へ。河野さんは47年8月に同市で生まれた。母親の大坂みつよさん(2004年に94歳で死去)は、現在の全国漁協女性部連絡協議会会長などを歴任。米ニューヨークまで出向くなど返還運動にも関わった。

 旧日本陸軍の通信兵だった岩国市美川町の藤村吉人さん(89)は、「ロシアの人たちに日本の地方を見てもらうチャンス」とみる。満州(現中国東北部)で終戦を迎え、旧ソ連軍の捕虜となりシベリア抑留は45年9月から約4年に及んだ。

 氷点下30度以下の極寒で駅を造るなどした。日頃接するソ連兵には優しい人もおり、体調を気遣い比較的楽な仕事に回してくれることも。「厳しい環境でも交流があれば互いに思いやることもできた。交流が続けば自然と仲良くできるようになるのでは」と言う。

 「過酷な体験をした祖父も故郷での会談の成功を願っているはずだ。大統領にも思いが届いてほしい」。シベリア抑留体験をモチーフに絵を描き続けた長門市出身の洋画家香月泰男の孫で、医師の斎木泰彦さん(46)=同市仙崎=はプーチン氏来訪を伝えるテレビ中継を見ながら力を込めた。

 地元の漫画家の知人たちと歓迎の旗を作った。大統領と安倍首相が握手するイラストに「以心伝心」を意味するロシア語を添えた。この日の会談前、首相の妻昭恵さん(54)に旗を託した。

(2016年12月16日朝刊掲載)

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