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山口知事選告示 原発是非 選択の夏

 首相官邸前に大勢の人が押しかける「脱原発」のうねりは山口にも波及するのか―。12日告示された山口県知事選は、各候補の原発やエネルギー政策に対するスタンスも注目される。同県上関町では中国電力が全国でも数少ない原発新設を計画。知事選の結果次第で国策に大きな影響を与える可能性もある。(山田英和)

 立候補したのはいずれも無所属で、NPO法人所長の飯田哲也氏(53)▽元県職員の三輪茂之氏(53)▽元国土交通審議官の山本繁太郎氏(63)=自民、公明党推薦▽元衆院議員の高邑勉氏(38)の4人。

 飯田氏は、原発依存から再生可能エネルギーへの転換で雇用や産業を生み出すと主張。上関原発の白紙撤回を求め「国、官僚、電力の独占体制、原子力ムラから攻め込まれる長州を、皆さんの力でひっくり返そう」と訴えた。福島の事故をめぐり東京電力に株主代表訴訟を起こした河合弘之弁護士も駆け付け、応援マイクを握った。

 県民の健康と安全を最優先施策に掲げる三輪氏は、さらなる普及の余地がある自然エネルギーの導入促進が重要と指摘し、上関原発の白紙撤回を主張。原発は福島の事故で安全性のもろさを露呈したとし、「原発は廃止が理想。新たな原発計画は大きな無駄をして危険を拡散する。絶対にするべきではない」と訴えた。

 山本氏は公約集に二井関成知事の「国のエネルギー政策に協力」「上関町の政策選択を尊重する」との方針踏襲を明記。当初は脱原発には言及しなかったが、脱原発論者らの立候補表明後は「脱原発依存は当たり前」と踏み込んだ。ただ、撤回には慎重で、国の政策を見定めた上で「県民や有識者の意見をしっかり聞く」とする。

 高邑氏は、初日の街頭演説などで原発に触れなかった。「県だけで判断できない。原発の是非のみに終始すべきでなく、電源の安定供給体制をいかに確保できるかだ」と言う。ただ、政策提案書には一定数の原発は必要と明記。ファンドを設け再生可能エネルギーを広め、効果を見極める5~10年は上関原発を凍結すると訴える。

 原発に関係する企業や団体の間では「脱原発」の集票力に危機感を抱く声も。一部の候補は「脱原発は争点にならない」として、より幅広い支援を模索する動きもあり、各陣営の思惑が入り乱れている。

(2012年7月13日朝刊掲載)

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