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山口県内 平静戻る 日露首脳会談 観光振興「財産」残す

 日ロ首脳会談のため長門市の湯本温泉を訪れていたロシアのプーチン大統領が県内を離れた16日、厳戒態勢が敷かれた同市周辺などに平静が戻った。温泉街の関係者からは「観光振興のきっかけに」と期待する声も上がった。大きなトラブルもなく、警備当局は胸をなで下ろした。

 みぞれが降りしきる16日午前10時半すぎ。プーチン氏は長門市職員たち約30人の見送りを受け、会談をして1泊した温泉旅館「大谷山荘」をリムジンで出発した。一般車両を封鎖した幹線道路を車列が南下。山口宇部空港(宇部市)から正午前に東京へ飛び立った。

 空港周辺には前日に続いて見物客が集まった。呉市の福祉施設職員松岡孝治さん(48)は「首脳同士が胸襟を開いて話し合ったことで雪解けした印象。恒久平和につながってほしい」。

 今回の会談で、観光客減に悩む山あいの温泉街は国内外から注目を浴びた。湯本温泉旅館協同組合の伊藤孝身理事長(72)は「物々しさを感じた2日間だったが、会談は湯本の財産になったはず」と強調。約60年続く食料品店を営む松永圭市さん(78)は「これを機に観光客が戻ってきてほしい」と願った。

 同市は、会談に向けて作成したロシア語の観光パンフレットや英語の案内板などを、今後の観光客誘致に活用したい考えだ。

 一方、32都道府県警の応援を得て、過去最大規模となる約4100人態勢で警備に臨んだ県警はこの日、検問などを一斉に解除した。検問は会談前日の14日から温泉街に通じる道路や空港周辺で大規模に実施。目立った不審者や不審物などの情報は確認されなかったという。

 県警警備課は「雪が降る中での警備だったが、県民の理解や協力で無事終えることができた。ほっとしている」とした。(長久豪佑、根石大輔、原未緒)

無事に見送り「ほっとした」 村岡知事

 村岡嗣政知事は16日、長門市での日ロ首脳会談を終えたロシアのプーチン大統領を、宇部市の山口宇部空港で見送った。15日の到着が2時間以上遅れたことなどを念頭に「予定外に日程が変わり、天候も悪かったが、無事に終えられてほっとしている」と述べた。

 プーチン氏は特別機に乗り込む直前に「ありがとう。とても美しいところだった」と感想を述べたという。村岡知事は「県も長門市もそれぞれの立場でおもてなしをした。気持ちが伝わって、大変うれしい」と喜んだ。  長門市の大西倉雄市長は、会場となった市内の大谷山荘で見送った。

「2020年の東京五輪・パラリンピックで、ロシア選手団の事前合宿をしてほしいと伝えた。市民のおかげで、厚いおもてなしができた」と語った。

(2016年12月17日朝刊掲載)

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