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島根2号機 再稼働 依然見通せず 審査申請3年 説明終了 まだ10分の1

 中国電力が島根原発2号機(松江市)の再稼働に必要な適合性審査を原子力規制委員会に申請し、25日で3年になる。審査を進めるため、中電は今年、原発近くの宍道断層の長さの評価を延ばし、耐震設計の目安となる地震の揺れの強さも引き上げた。だが規制委が断層の長さについて再度、質問するなど、中電が想定する審査対象29項目のうち、説明し終えたとするのは3項目に限られる。再稼働の行方が見通せない状況が続いている。(境信重、山本和明)

■宍道断層

 11月にあった審査会合。規制委の担当者は、7月に政府の地震調査委員会が公表した宍道断層の長さについて中電側に問い掛けた。「(地震調査委は)約21キロかそれ以上と示している。東端の考え方をもう一度整理してほしい」

 宍道断層は原発の南約2・5キロを東西に走る活断層。断層の長さは起きうる地震の揺れの強さを決め、原発の耐震設計に影響する。中電は追加の調査や規制委の指摘を踏まえて従来の22キロから25キロに長さの評価を改め、1月に規制委の了承を得たはずだった。しかし地震調査委は東に断層が延びる可能性を考慮し、長さを「約21キロかそれ以上」と確定できなかった。

 規制委の注文に、中電の担当者は「われわれの調査以上のものはないと思うが、もう一度説明したい」と発言。再度説明する考えを示している。

■基準地震動

 基準地震動は原発の耐震設計の目安として想定する地震の揺れの強さ。この値が上がれば耐震工事の費用も膨らむ。中電は宍道断層の長さを延ばしたことに伴い2月、基準地震動を600ガル(ガルは加速度の単位)から800ガルに引き上げる考えを規制委に伝えた。

 だが、その後の審査会合では800ガルの妥当性の議論にまだ入れていない。断層の深さや、ずれる角度の設定、基準地震動をどう計算するかといった前提について、規制委が審査しているためだ。中電の幹部は800ガルについて「十分に余裕をみている」と語る。

■新たな問題

 審査対象29項目のうち、規制委への説明を終えたのは、敷地の地質・構造、敷地と周辺の地下構造、どこでも起こり得る地震動の3項目だけ。設備の耐震設計方針など22項目は議論が続く。基準地震動や地盤・斜面の安定性など4項目は議論に入れていない。

 同じ沸騰水型の原発で、規制委が東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)6、7号機の審査を優先してきたことも影響している。島根2号機の今年の審査会合は16日時点で13回。昨年の44回と比べ3分の1以下だ。

 新たな問題も浮上した。今月8日、島根2号機の中央制御室に外気を取り込む空調換気ダクトで腐食による穴が見つかった。中電は原因調査の結果と再発防止策について報告書を規制委に提出する予定。14日の規制委の定例会合で、ある委員は「潜在的に設計に問題があった可能性がある。当事者として丁寧な対応を」と中電に求めた。

<島根原発を巡る主な動き>

2011年 3月 東京電力福島第1原発事故
  12年 1月 2号機が定期検査に入り運転停止。島根原発の稼働がゼロに          なる
      9月 原子力規制委員会が発足
  13年 7月 新規制基準が施行
     12月 中国電力が2号機の適合性審査を申請
  14年 5~10月 中電が宍道断層で1度目の追加調査
  15年 2~ 6月 中電が宍道断層で2度目の追加調査
      6月 低レベル放射性廃棄物の処理を巡る虚偽記録問題が発覚
  16年 1月 中電が宍道断層の長さの評価を22キロから25キロに延長          し規制委の了承を得る
      2月 中電が基準地震動を600ガルから800ガルに引き上げる          考えを規制委に伝える
     11月 規制委が宍道断層の東端の根拠を再度説明するよう中電に求          める
     12月 2号機の中央制御室の空調換気ダクトで腐食による穴が見つ          かる

(2016年12月17日朝刊掲載)

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