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社説・コラム

天風録 「賢者の贈りもの」

 クリスマスのプレゼントに悩んだら読み返したい、作家オー・ヘンリーの短編がある。貧しい若夫婦がひそかに思い立った。妻は自慢の長い髪を売って懐中時計の鎖を買い、夫は時計を売ったお金で妻の髪に似合う櫛(くし)を―▲プレゼントは擦れ違ったが二人は幸せだった。通い合う心が分かったから。一方、奮発した贈り物でも気持ちが届かず、空振りになる場合もある。訪日したロシアのプーチン大統領に安倍晋三首相が渡した品も一例か▲19世紀半ば、北方領土を日本領とした日露和親条約にまつわる絵巻物の複製という。返還に懸ける思いを込めたのだろう。だが今回の会談でも2島先行どころか、島影は遠いまま。「国民の大半ががっかりした」と自民党幹部も苦々しげだ▲贈り物の成果はこのところ芳しくない。米国の次期大統領を自宅に訪ねた折は、数十万円のゴルフクラブを届けた。でもTPPへの反対姿勢は崩せずじまい。相手の心をいかに動かすか、「戦略」の見直しが要りそう▲北方四島での共同経済活動が実現すれば、「日本人が何度も訪れ、住むことになる」。首相はきのう強調した。訪ロして話を詰めたいらしいが、さて何を手土産にするのだろう。

(2016年12月21日朝刊掲載)

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