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首相、真珠湾で慰霊 オバマ大統領と演説

「和解の力」強調 謝罪はせず 不戦の誓い貫く決意

 米ハワイを訪れた安倍晋三首相は28日(現地時間27日)、日米開戦の地、真珠湾をオバマ大統領と共に訪れ、戦没者を慰霊した。両首脳は真珠湾攻撃の生存者たちを前に、並んで演説。首相は「不戦の誓いを貫く」と宣言し、かつて敵対した日米が同盟関係を築いた「和解の力」の意義を強調した。先の大戦への謝罪の言葉は盛り込まなかった。(ホノルル発 田中美千子)

 両首脳は、真珠湾に沈む戦艦アリゾナの上に建てられた追悼施設「アリゾナ記念館」を訪問。戦没者へ献花し、黙とうした。岸田文雄外相、稲田朋美防衛相が同行した。政府によると、日本の現職首相としての訪問は初めて。オバマ氏は5月27日、現職大統領として初めて広島市中区の原爆慰霊碑に献花しており、両首脳の相互訪問が実現した形となった。

 続いて近くの埠頭(ふとう)に移り、演説した。首相は、敵対関係を乗り越え、戦後に米国民が示した「寛容の心」に謝意を表明。「米国は、日本が戦後再び、国際社会へと復帰する道を開いてくれた」と述べた。「戦後70年間に及ぶ平和国家の歩み」を「不動の方針」として貫く決意も示した。

 日米関係については「歴史にまれな、深く、強く結ばれた同盟国となった」と指摘した。トランプ次期大統領の就任も見据え、昨年4月の米議会演説で訴えた「希望の同盟」の重要性は不変とし、「戦争の惨禍はいまだに世界から消えない。寛容の心、和解の力を世界はいまこそ必要としている」と呼び掛けた。

 オバマ氏は、首相の訪問を「日米の人々の和解と結束の力を示す歴史的な行動だ」と歓迎。「日米の同盟はさらなる世界大戦を防いだ。アジア・太平洋地域の平和と安定のための礎石となっている」とし、「かつてなく強固だ」と述べた。

 首相は演説の冒頭で、真珠湾攻撃による大きな被害に触れ「その厳粛な事実をかみしめるとき、私は言葉を失う」と強調。「首相として永劫(えいごう)の哀悼の誠をささげる。戦争の惨禍は、二度と繰り返してはならない」とした。

 演説後、両首脳は出席した退役軍人たちと握手を交わした。父親が山口県田布施町から移民した日系2世の退役軍人、柳村清人さん(92)=ホノルル市=は「日米の両トップが一緒に立つ姿を見られるとは思いもしなかった。演説も印象的で日米関係のため素晴らしい機会になった」と語った。

 首相はアリゾナ記念館のビジターセンターにも立ち寄り、広島市中区の平和記念公園内にある「原爆の子の像」のモデルとなった佐々木禎子さんの折り鶴などを見学した。オバマ氏との首脳会談にも臨み、同盟強化の方針で一致した。

(2016年12月29日朝刊掲載)

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