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首相 真珠湾慰霊【解説】反省触れず説得力欠く

 安倍晋三首相が米ハワイ・真珠湾を訪れたのは、オバマ大統領の被爆地広島の訪問に続き、歴史的な意味を持つ。ただ、日米の和解と同盟の意義をアピールした演説では、先の大戦の責任には触れなかった。不戦の誓いを堅持するとしたものの、多くの犠牲を強いた国々には説得力を欠いたと言える。

 昨年の米議会演説や戦後70年談話で語った「痛切な反省」「深い悔悟」といった言葉は今回、使わなかった。相互訪問を実現したことで、「戦後」に区切りを付ける狙いがうかがえる。

 奇襲攻撃を受けた米国が戦後日本の繁栄を下支えしたとし、「寛容の心」の大切さも説いた。歴史認識問題を抱える中国や韓国に対するけん制、とみることもできる。ただ、自国の過ちに真摯(しんし)に向き合わない限り、相手の「寛容」を引き出すのは難しいだろう。

 米国は来月、トップが交代する。トランプ次期大統領は核戦力を強化する考えを公にし、ロシアとの軍拡競争に向かう恐れもある。日本が新政権と核兵器の非人道性の認識を共有し、「核なき世界」をどう実現していくのか。相互訪問の成果を示す試金石になる。(田中美千子)

(2016年12月29日朝刊掲載)

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