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建物高さ 法規制検討へ 原爆ドーム北側の景観保全

 世界遺産、原爆ドーム(広島市中区)の北側エリアについて、建物の高さを法規制する方向で市が2017年度から検討を始めることが分かった。平和記念公園を訪れる人たちがドームを望む南北軸上の「眺望景観」を保全する狙い。公園の周囲では努力目標として高さ基準を設けているが、16年のオバマ米大統領の訪問で注目されたのを受け、ヒロシマを象徴する景観を次代に残す手だてをとる。(和多正憲)

 眺望景観とは、特定の場所から対象を眺めたときの風景。東京都が06年度に、国会議事堂の背景を中心に景観誘導区域に定め、視界に入る建物の高さを法規制している。

 広島市は、資料館側から原爆慰霊碑を見た際に視線の先に入るドーム北側の一帯を中心に、景観法に基づく市の景観計画などで高さ制限を検討したい考え。17年度から実際の見え方を確かめつつ、有識者の意見を踏まえて規制のエリアや高さの議論を進める構えだ。

 市は06年に美観形成要綱で建物の高さを規定。平和記念公園に関しては、ドーム周辺のバファーゾーン(緩衝地帯)区域や近隣地域で、新築や増改築時に高さを20~50メートルの4段階で制限しているが、法的拘束力はない。

 市はこの要綱を作るに当たり、景観計画で高さを制限する方針を示し、市の審議会に諮ったが、対象地域のマンション住民や地権者が反対。法規制を見送り、要綱にとどめた経緯がある。今回は資料館側からドームを望む南北軸に絞り、理解を得たい考えだ。

 市都市計画課は「ドームの背景となる区域は、オバマ大統領の訪問で重要性があらためて認識された。将来にわたって景観を守るための具体的な方策を早急に検討したい」としている。

(2017年1月3日朝刊掲載)

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