×

ニュース

日韓の友好 推進に力 駐広島韓国総領事館20年

 駐広島韓国総領事館(広島市南区)が開設20年を迎えた。1997年1月1日に下関市から移り、広島、山口、島根の中国地方3県と愛媛、高知を合わせた5県を管轄する。ビザの交付や在日韓国人のパスポート発給などの業務に当たるほか、日韓友好を推進してきた。

 2014年4月に就任した徐張恩(ソ・ジャンウン)総領事(51)と職員約20人が勤務する。5県に暮らす特別永住者1万3511人を含む韓国人1万5862人(16年6月現在)の支援、韓国進出を検討する日本企業と現地企業の橋渡し、芸術公演会の企画など、経済や文化の交流を通じた親善に取り組む。

 日韓の団体が16年3月、関連資料を国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録申請した江戸時代の外交使節団「朝鮮通信使」に注目。呉市下蒲刈町である朝鮮通信使の再現行列などを関係自治体と協力して広報してきた。

 在日韓国人と市民をつなぐ交流行事にも力を注ぐ。10月3日の韓国建国を祝う「国慶日レセプション」を11年から広島市内で開いている。15年には日韓国交正常化50年を記念した行事を管内各地で開催。本国から交響楽団を招き、広島市中区の平和記念公園で野外公演を開くなどした。

 広島県内の日韓親善協会の設立にも力を入れ、計5協会になった。広島市と大邱(テグ)市はことし5月、姉妹都市提携20年を迎え、総領事館は記念行事を計画している。(栾暁雨)

徐張恩総領事に聞く 朝鮮通信使の精神 現代にも

 徐張恩総領事に総領事館の歩みや今後の展望を聞いた。(栾暁雨)

 広島に根を下ろし、20年にわたる日韓の交流に携われてうれしく思う。管轄する5県で暮らす韓国人のうち広島県は半数を占め、地理的にも韓国に近い広島に総領事館を置く意義は大きい。

 両国の往来は年間約550万人に上るが、中国地方への韓国人旅行客は多いとは言えない。朝鮮通信使の関連資料がユネスコの世界記憶遺産に登録されれば、さらに観光客を誘致する呼び水にしたい。

 日韓には約2千年の長い交流の歴史があり、浮き沈みもあった。それでも長期的には経済や文化、外交で発展してきた経緯がある。

 私自身、広島に着任するまで被爆の実態をよく知らなかった。多くの人に発信し、平和への思いを共有したい。平和の使者として朝鮮王朝と江戸幕府の友好を築いた朝鮮通信使の精神を現在に生かし、両国の発展的な関係のために今後も尽力したい。

<駐広島韓国総領事館と日韓の歩み>

1965年  6月 日韓基本条約調印(同年12月発効)
  66年  5月 駐下関領事館開設
  80年  5月 総領事館に昇格
  96年 12月 駐下関総領事館閉鎖
  97年  1月 駐広島総領事館開設(広島市中区鉄砲町)
       5月 広島市と大邱市が姉妹都市提携
  98年 12月 韓国で日本文化の段階的開放始まる
2002年5~6月 サッカーワールドカップ(W杯)日韓大会開催
  03年  4月 NHK・BSで「冬のソナタ」放映開始、韓流ブームに
  05年  3月 島根県が「竹島の日」条例制定
  06年 12月 総領事館が中区袋町に移転
  07年     朝鮮通信使400周年
  10年  3月 総領事館が現在の南区東荒神町に移転
  15年  6月 日韓国交正常化50年
      11月 3年半ぶりに日韓首脳会談

(2017年1月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ