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呉市下蒲刈などの朝鮮通信使資料 秋にも世界記憶遺産登録 島民一丸 盛り上げに力 

 呉市下蒲刈町にも寄港した朝鮮通信使の関連資料がことし秋にも、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録される公算が高まった。地元では、島おこしのチャンスを生かす動きも出始めた。(小笠原芳)

 「体育館くらいの大きな船だった」「島民一丸でもてなした」。下蒲刈小の6年生12人は昨年12月、通信使について調べた結果をまとめた模造紙を廊下に張り出して発表した。

 近く集大成として、資料を保管する地元の松濤(しょうとう)園で来館者を案内する。杉原萌さん(11)は「記憶遺産へのムードを盛り上げたい」と意気込む。

 日韓両国の団体は2016年3月、資料の記憶遺産への登録を共同申請した。資料数は111件、333点。その中核の一つともいえる行烈図は、松濤園に保管されている。瀬戸内海を行く船団を記録した唯一の絵巻だ。

 登録実現に備え、同園を運営する蘭島文化振興財団は、行烈図の公開や冊子の製作などの検討を始めた。

駐広島韓国総領事 徐張恩(ソ・ジャンウン)氏(51)

平和な交流 両国の自慢

 登録申請の結果が出るのはことし秋とみている。下蒲刈町で10月に開かれる再現行列の前までに決まれば、登録後初の大きな行事として盛り上がるだろう。再現行列は韓国でもニュースが報道されるようになっており、一層注目が集まる。

 2014年3月末に着任した。当時、首脳会談も開けなかった日韓関係は改善されつつある。15年に日韓国交正常化50年を迎え、首脳会談も実現した。

 国家間の関係は常に変化する。2千年以上にわたる日韓両国の関係でも、争いはあった。しかし朝鮮通信使は、平和に着目した両国自慢の歴史であり、遺産登録の価値がある。特に、今回は日韓の民間団体と自治体が申請した。準備段階から大勢が関わることで、登録後も主体性を持って広報活動が取り組まれるだろう。

旧下蒲刈町の文化財保護委員長 柴村敬次郎氏(81)

歴史と文化で島 再起を

 世界記憶遺産によって、地元が紡いできた歴史が世界に発信される。人口減少と高齢化が進む中、島が再起を図るきっかけになる。

 当時の町長の発案で1980年代から、通信使の資料集めや歴史の調査を進めた。歴史と文化を感じられる島を目指した。「安芸蒲刈御馳走一番」との評価を受けたとされる当時の料理の復元模型も作った。

 登録実現へ向けた島内の機運づくりはまだ不十分。さらに登録後を見据え、人を継続して呼び込むには何ができるか、官民一体で考える必要がある。さまざまな方策で島おこしにつなげてほしい。

朝鮮通信使
 朝鮮王朝が派遣した外交使節。江戸期は1607~1811年の間に計12回訪れ、友好の礎を築いた。うち11回、呉市下蒲刈町に寄港。同町では毎年10月、当時を再現した行列が練り歩く。

(2017年1月4日朝刊掲載)

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