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シベリア抑留父の体験手記 廿日市の新明さん 遺品から発見

辛苦 絵を交え詳しく 「平和学習に役立てて」

   シベリア抑留を経験し、2012年に97歳で亡くなった廿日市市の新明(しんみょう)恵さんが体験手記を残していた。抑留の辛苦をうかがえる内容で、遺族は地元の子どもの平和学習に役立ててほしいと願っている。(奥田美奈子)

 表紙に「シベリヤ素描」と記したA5判ノート71ページ。関東軍にいた新明さんは終戦後にシベリアに抑留され、鉄道敷設や畑の除草などの労働に耐えた2年間を丁寧な文字とペン画でたどっている。1947年の帰国直後にまとめたとみられる。

 「体をつき刺すような」風が吹き荒れる冬の作業、飢えに耐えかね残菜をあさる仲間、おけ1杯の湯しか与えられない週1回の入浴などを描写。自身の内面には触れず、序文に「私の血と涙で書き綴(つづ)った」とだけしたためている。

 新明さんは家族に戦争体験を語らず、手記もしまい込んでいた。保管していた妻マスコさんが15年に亡くなり、長男正峰さん(63)=同市=が遺品の中から見つけて昨年、初めて目を通した。

 「戦争経験者の言葉は重い。衣食住も詳しく描かれ、若い世代にも実態が伝わりやすい」と思い、わが子などに手渡すため、カラー複写して数部、製本した。希望があれば、近郊の学校などにも実費負担で譲りたいとしている。

 配布の受け付けは3月末まで。市文化協会Tel0829(31)4311=火-金曜午前10時~午後4時。

(2017年1月8日朝刊掲載)

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