×

ニュース

日韓友好導く通信使 ゆかりの地 福山市鞆で3月交流大会 記憶遺産認定へ弾み

 福山市鞆町を寄港地とした江戸時代の外国使節団「朝鮮通信使」へ、注目が高まっている。日韓の団体が昨年、関連資料を世界記憶遺産に共同申請。資料には、使節団が鞆町の海景を絶賛して残した書なども含まれる。3月にはゆかりの地の関係者が集う大会が鞆町で開かれ、認定へ向けて機運が高まりそうだ。(衣川圭)

 「日東第一形勝」。通信使の泊まった福禅寺対潮楼には、高官が「日本一の景観」として記した書を写した木製の額が掛かる。書は記憶遺産申請の関連資料の一つだ。資料には、鞆町に関わる6点14作品も含まれる。

 中国の漢詩人杜甫の「登岳陽楼」と同じ韻で、対潮楼に接した感動を詠んだ漢詩の額もある。山川龍舟住職(67)は「通信使の教養の深さは日本の文化人を魅了した」と話す。

 「通信使が見たのと同じ景観が残る場所は他にはない」と強調するのは、鞆の浦朝鮮通信使研究会の戸田和吉代表(65)。美しい眺めは鞆町民の誇り。3月の「朝鮮通信使ゆかりのまち全国交流福山大会」では、鞆小6年生が創作劇「日東第一形勝物語」を披露する。

 関連のイベントは多い。沼名前神社能舞台では3月、喜多流の能と韓国の伝統舞踊が共演する。鞆の浦歴史民俗資料館は10、11月、通信使の資料を展示。通堂博彰館長(66)は「資料を通じて数百年前の通信使と向き合って」と呼び掛ける。

 父母が韓国生まれで、結婚を機に福山市に移り住んだ韓国語講師の高取文姫(あや)さん(46)は講座のテーマに通信使を取り上げた。「200年続いた平和な関係を参考に、両国が信じ合えるプラス思考の交流を深めたい」と期待する。

<福山市鞆町でことし開かれる朝鮮通信使関連の主な行事>

 2月18日 朝鮮通信使の行列再現人形展(福禅寺対潮楼、3月12日まで)
   24日 通信使船を模した客船が就航(鞆―仙酔島間、3月10日まで)
   28日 展示「朝鮮通信使とゆかりの人形たち」(鞆の浦歴史民俗資料        館、3月20日まで)
 3月 4日 日韓伝統芸能フォーラムin福山(鞆公民館)▽日韓伝統芸能花        舞台in福山(沼名前神社の能舞台)
   10日 日韓文化交流・鞆(円福寺)
   11日 21世紀の朝鮮通信使の出迎え(常夜灯前)▽日韓トップ囲碁棋        士の対局(福禅寺対潮楼)
   12日 朝鮮通信使ゆかりのまち全国交流福山大会(鞆公民館など)
10月 5日 朝鮮通信使の関連資料などの特別展(鞆の浦歴史民俗資料館、1        1月19日まで)

朝鮮通信使と鞆
 1607~1811年に計12回来日した外交使節の朝鮮通信使は、対馬(長崎県)で接待した最後の1回を除き、鞆に寄港した。1636年の4回目からは毎回上陸し、寺などが宿泊場所になった。福山藩は1690年代、通信使の歓待のため福禅寺に客殿を建立。1711年の第8回で立ち寄った正使たち高官8人が、客殿からの瀬戸内海の眺めをたたえ、従事官・李邦彦(イ・バンオン)が「日東第一形勝」の隷書を残した。48年の第10回の正使・洪啓禧(ホン・ゲヒ)が客殿を「対潮楼」と名付けた。

(2017年1月10日朝刊掲載)

年別アーカイブ