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原発が生んだ福島の悲しみ 広島の団体がラジオドラマ化

 広島市の市民グループが、福島第1原発事故で避難中の6月に84歳で亡くなった福島県浪江町の佐々木ヤス子さんの手記を基に、ラジオドラマを制作する。20日は、佐々木さんと同じ仮設住宅で暮らした2人が、収録作業に合わせ広島市に到着した。

 市民グループは「まち物語制作委員会」。被災地の民話を聞き取り、紙芝居として守る活動をしている。

 メンバーは3月、福島県桑折町の仮設住宅で佐々木さんに出会った。「おそろしい放射能の空の下で」と題した手記に、着の身着のままの避難や水素爆発の恐怖、寒さに身を寄せ合った避難所の様子などを書き留めていた。佐々木さんは6月22日に亡くなった。

 グループは4月、手記を紙芝居にまとめた。全国のコミュニティーFM局を通して広めるため、ラジオドラマの制作も計画。出演者として桑折町の仮設住宅自治会の小沢是寛(よしひろ)会長(66)と石井啓輔副会長(69)を招いた。

 この日は、佐々木さんをモデルにアニメを作っている中区の基町高を訪問。21日は同区のスタジオを借りてドラマを収録する。

 シナリオを書いたグループの福本英伸事務局長(55)は「原発事故をまだ語りたくない現地の人に代わり、被爆地の私たちが避難経験を全国に伝えたい」。

 小沢さんは「まだ原発周辺は手つかずの状態なのに、事故が風化しているのが悔しい。実情を伝えてくれるのはありがたい」と涙を浮かべた。ドラマは8月以降、FMちゅーピー(広島市中区)など、全国の放送局に協力を呼び掛け放送する。(衣川圭)

東日本大震災の被災地の紙芝居作り
 広島市の「まち物語制作委員会」と、被災者支援団体「ボランデポひろしま」が連携し、東北地方ゆかりの紙芝居を制作している。3月には、福島県内の仮設住宅を巡って上演。50本の制作を目指す。12月には、同県いわき市で「東北紙芝居まつり」を計画している。

(2012年7月21日朝刊掲載)

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