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オスプレイきょう陸揚げ 岩国基地 地元の反発拡大

 米政府が米海兵隊岩国基地(岩国市)に先行搬入する垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機を積んだ民間輸送船グリーンリッジが22日夜、関門海峡を通過した。23日未明から朝にかけて岩国基地の港湾施設に接岸し、その後陸揚げ作業を始めるとみられる。安全性が確認されないままの搬入に地元岩国市や山口県、配備予定先の沖縄県なども反発を強めており、在日米軍再編問題は大きな局面を迎える。(編集委員・山本浩司、酒井亨)

 輸送船は22日夜、下関市西沖の六連島北から海峡に進み、午後8時25分ごろ、関門橋の下を通過。近くの公園には夕方から住民が数百人集まり「オスプレイはアメリカに帰れ」という声も上がった。

 輸送船は今月初めに米西海岸を出発。ハワイなどを経由して22日午前に韓国・釜山港を出港していた。周防灘から23日早朝には広島湾に入り、基地の港湾施設に接岸する見込み。

 岩国市では22日、市民団体が反対集会を開催。輸送船が到着する23日には、各団体や労組が基地周辺でゴムボートによる海上デモなどを予定している。

 オスプレイは開発段階から事故が相次ぎ、4月にはモロッコで4人が死傷、6月にも空軍の同型機が米フロリダ州で5人が負傷する墜落事故を起こした。

 米軍は岩国基地での試験飛行を経て10月から普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を拠点に本格運用する方針。日米両政府は安全確保を最優先する姿勢を強調し、配備計画に理解を得たい考えだ。

 だが、岩国市などは「搬入しないよう要請していたが裏切られた」などと反発。「強行されれば国と地元との信頼関係が崩れかねない」と強くけん制している。

 一方、森本敏防衛相は22日、10月から普天間飛行場で本格運用する米政府の計画に変更はないとの考えを都内で記者団に重ねて示した。

抗議の「×」 岩国1100人 集会や行進

 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの米海兵隊岩国基地への先行搬入が近づいた22日、搬入などに反対する集会が地元岩国市の市役所前広場であった。中国5県のほか、四国や沖縄などから約1100人(主催者発表)が参加し、×印を付けたオスプレイの写真を掲げて、絶対反対の意思をアピールした。(堀晋也)

 真夏日となったこの日の集会で、実行委員会の吉岡光則委員長が「地元の反対の声を無視した行為に満身の怒りを込めて抗議する」と声を上げた。米軍機の騒音被害が及ぶ岩国市由宇町の大学3年喜良紗也香さん(20)らも登壇し「日本のどの地域でも飛んでほしくない」と訴えた。

 集会には、岩国に先行搬入後に配備が予定される沖縄県からも住民団体のメンバーらが続々と詰めかけ、「全国で危険な低空飛行が繰り広げられることになる。何とか力を合わせてオスプレイを阻止したい」などと共闘を呼び掛けた。

 岩国搬入と国内配備撤回を求めるアピール案を採択。参加者全員で×印を付けたオスプレイの写真を頭上に掲げ、反対の意思を示して閉会。周辺約1キロをデモ行進した。

 オスプレイを積んだ民間輸送船は22日夜、関門海峡を抜けた。23日朝にも岩国沖に姿を現すとみられる。

 基地に近い岩国市尾津町の主婦布施里美さん(39)は3歳の長男を連れて参加し「小さい子がいる親としては安心して住める町であってほしい。一人の声は小さいがみんなで反対の意思を伝えたい」と話していた。

巨船 闇を進む 上空ルポ

 オスプレイ12機を積んだ巨大な輸送船が午後8時25分ごろ、関門橋をくぐった。闇に包まれ、下関、北九州両市の市街地の明かりが広がる一帯。ほとんど照明をつけず、黒い巨体は40秒ほどで関門橋をくぐり、周防灘方面へ消えていった。

 ヘリで海峡に近づくと、暗がりの中、ゆっくりとしたスピードで航行する巨艦を見つけた。上空には報道機関のヘリが飛び、物々しい雰囲気も感じたが、海上は静か。風はあまり強くなく、ややかすみがかかっていた。

 初めて日本に搬入されるオスプレイ。大きく国を揺さぶる配備計画とは裏腹に、輸送船は海面を滑るように進んでいた。(大村隆)

反対団体 岩国入り 「阻止」誓い合う

 オスプレイの米海兵隊岩国基地(岩国市)への先行搬入阻止を目指し、同様に米軍基地を抱える沖縄県など各地の市民団体メンバーなどが22日までに続々岩国入りした。地元の団体と合流し搬入阻止を誓い合った。

 「岩国と沖縄だけの問題ではない。全国で低空飛行が繰り広げられることになる」。沖縄県東村高江への米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)移設に反対する「ヘリパッドいらない住民の会」の安次嶺(あしみね)現達さん(53)と比嘉真人さん(34)は沖縄から広島空港経由で岩国入りした。

 安次嶺さんは「オスプレイが離着陸し、沖縄県内を行き来して訓練するようになる」と危機感を強める。2007年から住民らが建設予定地で座り込みなどを続けているが、工事が強引になっているという。

 2人はこの日、抗議活動を予定する市民団体の一つ「住民投票の成果を活かす岩国市民の会」の大川清代表(54)と対面。3人は「沖縄配備の道筋をつけないよう協力し、陸揚げを阻止しよう」と一致した。

 搬入される見通しの23日、各地から集まった反対派市民たちは基地周辺で抗議活動のほか、陸揚げ阻止を図るためゴムボートなどによる海上デモも展開する。米軍基地のある神奈川県横須賀市や長崎県佐世保市の市民団体なども駆け付ける。(酒井亨)

(2012年7月23日朝刊掲載)

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