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オスプレイ岩国陸揚げ 抗議活動の中 12機

 米軍は23日、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機を米海兵隊岩国基地(岩国市)に先行搬入した。岩国市の福田良彦市長や山口県の二井関成知事は強く反発。市民団体の激しい抗議活動が陸上、海上で展開された。相次ぐ墜落事故による安全性への疑念から陸揚げに反対した地元の意向は考慮されず、岩国基地を含めた在日米軍再編にも影響を与える可能性も出てきた。(酒井亨、山田英和)

 オスプレイを積んだ民間輸送船グリーンリッジは23日午前5時すぎに岩国沖に姿を現し、同6時20分に基地の港湾施設に接岸。オスプレイは固定翼を90度回転させた状態で1機ずつ駐機場へ運ばれ、同日夕までに全12機の陸揚げを終えた。

 基地近くの堤防では市民団体や労働組合のメンバー約600人(主催者発表)が手をつないで「人間の鎖」をつくり「オスプレイは帰れ」と抗議。付近の海上でもゴムボートなど9隻が海上デモをした。

 米側は早ければ8月末にも試験飛行を実施し、10月に普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備する予定を変えていない。野田佳彦首相は「きちんと安全性が確認されるまで、日本での飛行は行わない方針だ」と官邸で記者団に説明したが、地元の反発は必至の情勢だ。

 二井知事は県庁で記者団に「スケジュールありき。大変怒りを覚える」と批判。福田市長も「国と地方の信頼関係が崩れかねない。今後の日米安保政策への影響が懸念される」と指摘した。

 二井知事と福田市長は、柳居俊学県議会議長と近く上京し、玄葉光一郎外相と森本敏防衛相に抗議する方針。安全を確認できなかった場合は米国に持ち帰るよう求めるという。

 政府は24日にも防衛、国土交通両省などの専門家チームを立ち上げ、週末に米国に派遣、4月にモロッコで起きた事故調査結果の説明を受ける考えだ。

 米軍はモロッコで4人死傷し、米フロリダ州で5人が負傷した墜落事故の原因調査を進める方針。10月の沖縄配備後は岩国基地とキャンプ富士(静岡県)に毎月数機を派遣し、本州、四国、九州でも低空飛行訓練などを計画している。

≪オスプレイに関する今後の日程≫
 7月23日    ●岩国基地に陸揚げ
 7~8月     ●日本政府の調査チーム米国派遣
 7月29日    ●山口県知事選投開票
 7月末      ●モロッコでの墜落事故の調査結果発表
 8月初旬?   ●森本敏防衛相が訪米
    5日     ●沖縄で配備反対の県民大会
 8月中      ●米フロリダ州での事故の調査結果発表
 8月下旬以降  ●岩国で試験飛行。その後、沖縄・普天間飛行場へ移動
10月初旬    ●本格運用開始

オスプレイ
 米海兵隊の主力兵員輸送機MV22の通称。主翼両端のプロペラ部分の角度を変えることでヘリコプターのような垂直離着陸と固定翼機並みの速度の双方が可能。CH46中型輸送ヘリの後継で最大速度は約2倍、行動半径は約4倍になる。全長17・5メートル、全幅25・8メートル。試作段階で30人が死亡し、飛行を一時中断したが、米政府は技術的な問題はクリアしたとして量産を決定、イラクなどで実戦投入されている。しかし今年4月にモロッコ、6月には空軍仕様の同型機が米国で墜落事故を起こし計9人が死傷、安全性への懸念が高まっている。

艦載機移転 協力姿勢見直し示唆 山口知事「長期駐機なら」

 山口県の二井関成知事は23日、在日米軍再編に伴う空母艦載機の岩国基地への移転などの計画について「(オスプレイが)岩国基地に長期にとどまるということになれば、やはり考え直さなければいけない」と述べ、これまでの協力姿勢を転換する可能性を示唆した。

 県庁でオスプレイを積んだ輸送船の岩国到着後に取材に答えた。

 岩国基地には2014年までに米海軍厚木基地(神奈川県綾瀬市など)から空母艦載機59機が移転することなどが決まっている。

 二井知事は、防衛政策には国と構築した信頼関係に基づいて協力してきたと強調。仮に関係が崩れた場合にはこれまでの対応を見直す意向を示し、「信頼関係を突き崩すようなことがないよう、オスプレイについてもしっかりと地元の意向を踏まえて対応していただきたい」と日米両政府を強くけん制した。

 ただ「私の任期中の問題ではないという感じもある。次の知事がしっかりとその時点での状況を踏まえ、対応していただきたい」とも述べた。(山田英和)

(2012年7月24日朝刊掲載)

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