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社説・コラム

天風録 「USAとトランプ」

 大分県宇佐市を訪れ、自慢のご当地グルメを味わったことがある。鶏の唐揚げだ。専門店発祥の地で、店ごとに秘伝のタレがあるらしい。香ばしい熱々を楽しめたが、一品で頼むと山のように出てきて少し胃が重くなった▲この地がきのう脚光を浴びたのはローマ字なら「USA」のためだ。新大統領誕生を祝う一日駅名「宇佐アメリカン駅」にトランプタワーと称する段ボールのオブジェ…。本人のフライドチキン好きにあやかったとか▲オバマブームに乗った福井県小浜市と違い、役所に苦情もあったと聞く。ここは遊び心と受け止めたい。晴れの日にデモが暴徒化し、トランプ氏も普通の神経なら胃が痛いはずだ。思わぬエールを歓迎するのかどうか▲就任演説では名指しこそ避けたが、東洋の島国を何かとやり玉に挙げてきた。タワーを建てた不動産王の時代はジャパンマネーにも世話になったというのに。対日政策の行方はどうなる▲宇佐は米空襲の歴史もある。どんな政権でも、友好を深めるに越したことはない。仮にこの地に来たとして、市民を挙げて唐揚げでもてなしたい大統領に、願わくは変身してほしいものだ。からしをたっぷり利かせるのではなく。

(2017年1月22日朝刊掲載)

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