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核なき世界 政策注視 トランプ大統領就任 被爆者 広島訪問呼び掛け

 被爆地を訪れ、核兵器の非人道性を理解してほしい―。米国のトランプ大統領の就任を受け、被爆者たちは21日、オバマ前大統領に続く広島訪問を期待し、呼び掛けを強めた。ただ、就任前から核戦力の増強、削減いずれともとれる考えを発信しており、「核兵器なき世界」という目標を共有できるのか、不安も強い。

 トランプ氏は就任演説で「米国第一」などと国家運営の持論を強調する一方で、核政策には触れなかった。広島県被団協の坪井直理事長(91)は広島市中区で証言活動後、記者団に「演説は抽象的だった。具体的にどう取り組むのか注目したい」と語った。

 昨年5月に広島を訪れたオバマ氏とは対面し、言葉を交わした。後任のトランプ氏は先月、ツイッターで核戦力の強化を目指す趣旨を投稿した。「オバマさんは少なくとも、核廃絶を目指すという点で私たちと同じだった。トランプさんはそうじゃないのかもしれん」との懸念を抱く。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(72)も「国益を考えるあまり、極端に排他的にならなければいいが」と不安視する。ことし3月に始まる「核兵器禁止条約」の制定交渉を巡って米国は一貫して反対。「トランプ氏は核問題について勉強不足なのでは。被爆国である日本政府の役割はより大きくなる」と述べた。

 前広島市長の秋葉忠利氏(74)は今月、トランプ氏宛ての手紙をホワイトハウスと東京の米国大使館へ郵送した。外交努力で北朝鮮の核放棄を導き、北東アジアの非核化を実現するよう求める内容。被爆地訪問も要請した。「被爆者の体験とヒロシマのメッセージがトランプ氏に届くよう、さまざまな形で発信し続けるのが広島の役割だ」と話す。(長久豪佑、岡田浩平)

(2017年1月22日朝刊掲載)

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