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社説・コラム

『潮流』 友情の証し

■呉支社編集部長・岡田浩一

 オルチャンメーク、オルチャンファッション。とにかく「オルチャン」が、いまどきの女子中高生のキーワードの一つらしい。

 「美少女」を意味する韓国の造語だという。隣国の10、20代の流行を日本の同世代が楽しんでいる。

 メークなら美肌に太めの眉がポイント。口紅は輪郭を薄く。前髪を緩く巻いたら完成。スキージャンプの高梨沙羅選手もオルチャンメークで話題を集める。

 わが家でも、娘が前髪をカーラーで巻いたままうろついている。インターネット通販で韓国で人気のリュックサックも取り寄せた。編み目のポケットに、韓国のリップクリームを入れるのがおしゃれらしい。

 わが家の鍋料理には餅のようなトッポギが入り始めた。卒業記念旅行は韓国に行くつもりのようだ。

 ドラマ「冬のソナタ」が巻き起こしたかつての韓流ブームを主に支えたのは、大人の女性だった。沈静気味に見えたブームが、今度は中高生で再燃している。K―POPも歌番組にこそ登場機会が減ったが、男性アイドルグループの日本ツアーはチケットの入手が困難という。

 昨年末、中国新聞呉支社の記者が韓国を訪ねた。呉市下蒲刈町など日韓に残る朝鮮通信使の関連資料が、ことし秋にも国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録される見込みが高まる。韓国側の取り組みを取材するためだ。

 記者の報告では、釜山の朝鮮通信使歴史館の学芸員が小中学生向けの見学ツアーでこう呼び掛けているという。「日韓関係にはいま課題があるが、友好の歴史もあった。これに習って友情を築いていこう」

 こんな時だからこそ日韓共同で申請した登録の実現を期待したい。両国民が互いに抱く友情、あこがれ、敬意は確かにある。朝鮮通信使もオルチャンも、その証しであるはずだ。

(2017年1月24日朝刊掲載)

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