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休校前 最後の卒業演奏会 広島音楽高 68年の歴史を胸に 「感謝の気持ち込め」28日公演

 3月末で休校する広島音楽高(広島市西区)の休校前最後となる卒業演奏会が28日、中区の広島県民文化センターである。戦後間もなく被爆地に開校し、広島の音楽教育を支えた68年の歴史を胸に、3年生が集大成の公演に挑む。

 同校は1949年、広島市小町(現中区)に開校。原爆の爪痕のまだ濃い時期に、浄土真宗本願寺派安芸教区の寺院や門信徒が、地方の文化を育み、心に潤いをもたらそうと私財を投じて創立した。音楽大の付属校以外で音楽に特化した高校は全国的にも珍しい。

 開校当初は楽器や設備も十分でなかったが、活気に満ちていたという。5期生の堀徳枝さん(78)=中区=は「音楽で街を元気にしようと必死だった」。教諭は薄給で給与の遅配も生じたが、元教頭の山崎登さん(87)=佐伯区=は「生活は苦しくてもやりがいがあった」と振り返る。

 73年に現在地の己斐東(西区)へ移転。音楽に集中できる家庭的な雰囲気の中、多い年には1学年に80人以上が在籍し、延べ3800人余りを送り出した。卒業生は幅広い分野で活躍し、ジュネーブ国際音楽コンクールピアノ部門優勝の萩原麻未さん、東京都交響楽団首席オーボエ奏者の広田智之さん、ジャズピアニスト大林武司さん、音楽座ミュージカルの高野菜々さんらがいる。

 一方で近年、少子化や、音楽を重点的に学べる学科を設ける公立校の動きなどもあり、生徒が減少。2007年度からは毎年、1学年50人の「採算ライン」を下回り、赤字が続いていた。学校を運営する見真学園の安部恵証(えしょう)理事長は「灯を消さないでという卒業生たちの思いはよく分かるが、経営面で立ちゆかない」と理解を求める。

 今回で66回目となる卒業演奏会には3年生18人が出演。学内で選ばれた5人がピアノ独奏やソプラノ独唱で3年間の成果を発表する。全校生徒による「ふるさと」や「蛍の光」、校歌の混声合唱もある。

 「長い歴史の重みを感じながら、感謝の気持ちを込め、最後にふさわしい演奏会にしたい」とミュージカル科の本荘信乃(しの)さん(18)。本番に向け、仕上げの練習を重ねている。

 演奏会は午後2時開演。無料。(余村泰樹)

(2017年1月24日朝刊掲載)

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