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オスプレイ エンジン調整入り 知事・市長 きょう防衛相に抗議

 岩国市の米海兵隊岩国基地は24日、陸揚げした垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機を、将来の飛行に備えてエンジン始動させると発表した。先行搬入を拒んでいた山口県の二井関成知事と岩国市の福田良彦市長は25日、森本敏防衛相たちに都内で会い、抗議の意思を伝える。

 岩国基地は、始動時にオイルが排気システムに触れて煙が発生することもあるが安全に関わるものではないとしている。また、安全性の確認が済むまでは試験飛行はしないとする米政府の方針を繰り返している。

 陸揚げされたオスプレイは、24日夕までに基地西側の駐機場に移動。回転翼が勢いよく回るなどの動きは確認できなかったが、翼の角度をゆっくりと変えたり、給油のための車両が行き交うなどしていた。本格的な始動準備に入ったとみられる。

 一方、二井知事と福田市長は山口県議会の柳居俊学議長、岩国市議会の貴船斉副議長と上京し、25日、森本防衛相と玄葉光一郎外相に国への不信感と強い憤りを表明。安全性を確認し、地元自治体が納得できる説明をする▽安全性が確認されない場合は(米国に)持ち帰る▽岩国への長期駐機がないよう必要な措置を講じる―など5項目を求める。(大村隆)

岩国基地沖で試験飛行へ 広島知事に防衛局説明 米管理の区域内か

 米海兵隊岩国基地(岩国市)に陸揚げされた垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、米軍が基地沖の海上の空域で試験飛行をする方針であることが24日、分かった。オスプレイ陸揚げについて中国四国防衛局の説明を受けた広島県の湯崎英彦知事が明らかにした。(野崎建一郎)

 湯崎知事はこの日、県庁を訪れた中国四国防衛局の辰己昌良局長と面会。直後の記者会見で湯崎知事は「試験飛行は基本的に制限区域の範囲で行われる」と述べた。基地の北側に位置し、不安の声がある世界遺産の島・宮島(廿日市市)周辺には「飛ばないと理解している」と語った。

 防衛局によると、オスプレイが試験飛行を予定するのは基地東側の海上空域。関係者によると米軍が管理し、日本の船は航行できない制限区域とその周辺海域の上空が主な飛行エリアになる見通しという。

 墜落事故が相次ぐオスプレイの試験飛行をめぐっては、日米両政府が安全性を確認するまで実施しないことで合意している。米軍は、8月に安全確認の前提となる米フロリダ州での事故調査結果を公表。同月中にも岩国基地で試験飛行をする予定でいる。

 湯崎知事は24日、辰己局長に対し、県民の不安や反発を背景に「政府の感度は薄いのでは」と苦言を呈し、安全確認をするまで試験飛行をしないようあらためて要請。その後の会見でも「(日米両政府は)スケジュールありきで動いている。安全性の説明もどこまできちんとやってもらえるか危惧している」と不信感をあらわにした。

制限区域
 日米地位協定に基づき、日本側が米軍に提供する区域。米海兵隊岩国基地(岩国市)では、米船舶の係留や弾薬処理を目的に、基地東側のほぼ五角形の1870ヘクタールの海域が指定されている。日本の船舶の航行や漁船の操業は禁止され、正当な理由がなく区域内に入り、退去要請に応じない場合、「日米地位協定実施に伴う刑事特別法」により罰せられる。

安保政策に悪影響懸念 玄葉外相、地元反発で表明

 米海兵隊岩国基地への垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ搬入に山口県、岩国市が反発を強めていることについて、玄葉光一郎外相は24日、国会内で記者団に対し、今後の安全保障政策に悪影響を与える懸念を表明した。

 玄葉氏は普天間飛行場(沖縄県)へのオスプレイ配備が「安全保障上の要請も間違いなくある」と指摘。反発が長引いた場合の安保政策への影響について「(懸念を)当然持っている。だから(オスプレイの)安全性と安全保障の両立が必要だ」と強調した。

 また、山口県の二井関成知事が23日、オスプレイの駐機が長引くなどした場合に米軍再編に伴う岩国基地への空母艦載機移転に協力する姿勢の見直しを示唆したことについて「発言を把握してからコメントしたい」と述べた。森本敏防衛相は国会内で記者団に、二井知事らとの面会で地元の意向を聞く姿勢を強調した。

 玄葉氏はオスプレイの安全管理を協議するため、日米地位協定に基づく日米合同委員会を26日に開催することも明らかにした。同委員会は日米双方の外務、防衛当局者らが出席し、外務省で開催する。(岡田浩平、山本洋子)

滑走路沖合移設に伴い整備 大型港湾 搬入誘い水 軍事拠点機能 強化浮き彫り

 米軍の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機を運んだ民間輸送船が目指したのは、岩国市民の悲願だった沖合移設に伴い整備された米海兵隊岩国基地の港湾施設だった。最大5万5千トンの船舶が接岸できる、この施設が受け皿となった。航空機事故の危険や騒音を減らすための滑走路移設事業は、軍事拠点として港湾面でも機能を強めたことを浮き彫りにした。

 24日早朝に12の機体を降ろし始め、夕には姿を消した約3万2千トンの輸送船が寄港した港湾施設は、基地沖合を埋め立てて滑走路を1キロ東へ移す事業に伴い、国が整備した。2005年に米軍に提供された岸壁は水深13メートル。水深8メートル、2万5千トンまでの船舶しか接岸できなかった移設前に比べ、充実した。中国四国防衛局は「沖合に出るほど水深は深い。大型船舶の停泊のためではない」と説明するが、米軍は基地の機能性を評価する。

「水深深いから」

 24日までに岩国基地へのオスプレイ搬入の動画を公開した米軍。岩国基地のジェームス・スチュワート司令官は動画インタビューで「水深の深い港湾施設があるからだ」と搬入理由を答えている。  基地問題に詳しい元山口県議の久米慶典さん(56)は、内部告発サイト「ウィキリークス」に掲載された米軍の内部報告書を入手。新設する港湾施設の調査結果として「岩国基地は、米軍の海上輸送作戦を支援するに十分な能力を持つ港湾になる」と記されていた。

「艦載機」は決定

 沖合移設は米軍のファントム機が九州大構内に墜落した1968年の事故を機に「市民の悲願」となった。国が2474億円をかけ96年度に着工し2011年3月に完了した。

 そして国は事業途中の06年、米軍厚木基地(神奈川県)から14年までの艦載機59機の移転を正式に決めた。

 米軍再編に対し山口県と岩国市は「これ以上の負担増は認められない」とのスタンスだが、米軍にとって魅力的な軍事施設になった面は否めない。久米さんは「岩国は飛行場と港が隣接する充実した基地。搬入先に選ばれたのは必然」と今後の機能強化の可能性も指摘、警戒を強めている。 (酒井亨)

オスプレイ阻止 連携強化 岩国の団体 沖縄へメンバー派遣

 米海兵隊岩国基地に先行搬入された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイをめぐり岩国市の市民団体などは、配備予定先の沖縄県で8月5日開かれる沖縄県民大会に合わせ、メンバーを派遣したり、岩国基地周辺でのフィールドワークを計画したりしている。「岩国で動かさず、米国に持ち帰らせる戦い」とし、沖縄との連携を強める。(堀晋也)

 沖縄の集会は、米軍が岩国で試験飛行した後に配備を計画する米軍普天間飛行場のある宜野湾市で予定。「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会」として過去最大の参加人数を目指す。大会で採択する反対決議を掲げ、政府などに配備反対の要請行動を行う。

 岩国市の団体も集会へメンバーを派遣。「岩国搬入は沖縄配備の前提。岩国で動かさず、米国に持ち帰らせる連帯の気持ちを伝えたい」としている。

 このほか、8月5日午後1時からは岩国市麻里布町の市福祉会館で、JR西日本労働組合(JR西労)などでつくる団体が連帯集会を予定。基地監視団体「リムピース」共同代表で田村順玄・岩国市議たちが連帯あいさつをする。

 また同日、原水爆禁止世界大会(原水協系)の「動く分科会」で岩国基地調査行動が行われ、岩国地域原水協の吉岡光則理事長らが岩国基地周辺を案内し、オスプレイや基地の現状を説明する。

(2012年7月25日朝刊掲載)

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