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福屋保存に初適用 広島市 被爆建物 最高8000万円

 被爆建物の福屋八丁堀本店(広島市中区)の保存工事に、市が補助金を拠出する方針を固めたことが26日、分かった。市独自の被爆建物の保存支援制度で、2016年度に金額を最高8千万円に引き上げて以降、初適用となる。市は工事内容などを踏まえ、17年度当初予算案に補助費用を盛り込む見通しだ。

 市の制度では、民間が所有する鉄筋やれんが造りの被爆建物の保存工事をする場合、費用の全額を8千万円を上限に補助する。引き上げ前は費用の4分の3を3千万円を上限に補助していたが、被爆70年が過ぎて建物の老朽化が進む現状を踏まえ、大幅に拡充した。補助対象になり得る建物は11件あるが、初年度は適用はなかった。

 福屋八丁堀本店は鉄筋造りで、1938年に地上8階、地下2階の百貨店として開店。45年8月6日に投下された原爆では、爆心地から710メートルの距離にあり、爆風や火災で建物はぼろぼろになった。戦後、復旧を進めて営業を再開し、増改築も重ねて72年には外壁を全面的に改装した。

 複数の関係者によると、福屋(中区)は12年から十数年の計画で、八丁堀本店のリニューアルと並行して耐震化を進めている。1階は周囲に柱を入れ、窓ガラスを減らして壁を造った。市は福屋と補助制度について協議を重ね、17年度に補助を適用する方向になった。工事の進み具合を踏まえ、補助金を複数年に分けるかどうか検討している。

 市は厚生労働省が16年度に設けた、広島、長崎両市への被爆建物保存支援補助金(1件上限2千万円)も充てるとみられる。

 福屋の大下龍介会長(80)は「地域の皆さんとともに被爆後の復興を支えてきた建物。メンテナンスをしっかりしながら大切に使っていきたい」と話している。(長久豪佑、桑島美帆)

(2017年1月27日朝刊掲載)

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