×

ニュース

艦載機移転 国が説明 岩国市議会全協 市の要望事業化へ

 在日米軍再編で岩国市の米海兵隊岩国基地へ米海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機約60機が移転する計画を巡り、岩国市議会は27日、国から説明を聞く市議会全員協議会を開いた。国側は、市が地域振興策として要望した岩国南バイパスの南伸について、2017年度から事業化の検討に着手する考えを示した。

 岸信夫外務副大臣と宮沢博行防衛政務官たちが出席。「早ければ7月以降」とされる艦載機移転のスケジュールや移転後の騒音予測図を説明し、「抑止力の強化につながる」と理解と協力を求めた。

 全9会派から議員13人が質問に立ち、騒音への懸念や国の対応、安心安全対策や地域振興策の進み具合について尋ねた。岸外務副大臣は岩国南バイパスの南伸について、国交省から得た回答として「道路のルートと構造の検討段階に入る」と、17年度からの事業採択を示唆。「早く事業化につなげたい」と述べた。

 また、国が市に計画を伝えた20日、福田良彦市長が新たに要望項目に挙げた小中学校の給食費無料化の予算措置について、宮沢防衛政務官は「遅くとも18年度から実施できるよう取り組みたい」と明言。防犯カメラと防犯灯の設置も17年の着手を目指すとした。

 艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)について国側は、訓練施設の整備候補地として馬毛島(鹿児島県西之表市)を地権者から買収する手続き中と説明。整備までに「10年程度かかる」との見方を示した。それまでは原則、現在の硫黄島(東京)で実施する。

 市と山口県が艦載機移転の前提とする米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設の見通しについて、宮沢防衛政務官は「(辺野古移設を巡る昨年12月の)最高裁判決によって移転事業が進むので、一つの見通しにはなった」との認識を示した。(野田華奈子)

米空母艦載機移転計画
 在日米軍再編で米海軍厚木基地の艦載機が米海兵隊岩国基地に移転する計画で、日米両政府が2006年に合意。日本政府は現在61機が移転するとみる。今月20日、山口県と岩国市に移転開始時期を「早ければ7月以降」と伝えた。18年5月にかけて順次配備される。移転によって岩国基地の配備機数は倍増の約120機、隊員や家族は1万人を超える見通し。移転準備のため、市中心部の愛宕山地区では米軍家族住宅や運動施設の整備が進む。

議員 FCLP不安視の声 艦載機移転 岩国市議会全協で国説明

 岩国市の米海兵隊岩国基地へ米軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機が移転する計画について国から説明があった27日の市議会全員協議会。岩国南バイパスの南伸など市の要望に対する国側の前向きな回答が目立った。議員からは騒音の激しい陸上空母離着陸訓練(FCLP)の実施を不安視する声や、住民目線の安全対策などを求める意見が相次いだ。(馬上稔子)

 「FCLPを岩国でしないと確約してほしい」。議員からは、騒音や事故への懸念とともに要望が相次いだ。宮沢博行防衛政務官は「天候などにより硫黄島で訓練できない場合、運用上やむを得ないこともある」と説明。「実施される場合には、地元への影響が最小限となるよう申し入れたい」と述べた。

 2月から、艦載機のうちE2D早期警戒機5機が岩国基地で2、3カ月間訓練する。議員からは「市は艦載機移転を容認していない。先行移転ではないか」と批判も出た。宮沢政務官は「これは配備前訓練だ」と強調し、理解を求めた。

 E2Dが岩国で訓練する理由について国側は「岩国基地にしかない支援施設があるため」としたが、詳細を問われると「米軍側の運用に関わり答えられない」とし、傍聴席にも不満の声が漏れた。

 市が求めている地域振興策について複数の議員が「有言実行。目に見える形で取り組まないと地元理解は得られない」「市民が納得できるものを」などと迫る場面もあった。

 岩国南バイパス南伸については岸信夫外務副大臣が今後、ルートや構造の検討段階に入ると説明。小中学校の給食費無料化についても宮沢政務官が予算措置を明言した。

 住民説明会の開催を求める声に対し国側は当初、「現時点では考えていない」と回答。議員から「丁寧な説明が必要」との批判を受け、「検討したい」とした。

<艦載機移転計画を巡る主な質問と国の回答>

■2月から始まるE2Dの訓練は先行移転ではないか
岩国基地で2、3カ月訓練をした後いったん空母に戻る。先行移転ではなく、配備前訓練
■E2Dの配備前訓練をなぜ岩国で行うのか
E2Dを支援する施設が、岩国基地にしかないと米側から説明を受けている。施設の詳細については、米側の運用に関わることなので差し控える
■地域振興策などへの対応は
岩国南バイパスの南伸に向け、ルートや構造の検討段階に入る。小中学校の給食費無料化については遅くても2018年度から実施できるように取り組む
■FCLPが岩国基地で実施されるのでは
天候などの理由により硫黄島で実施できない場合もある。可能な限り多くの訓練を硫黄島で実施するよう求める
■防音工事の助成対象となる「第1種区域」の見直しは
艦載機移転後、岩国基地での運用が安定してから騒音を調査し、適切に対応したい

(2017年1月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ