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米最新鋭機2種 なぜイワクニに 一緒に訓練も 中国の動き けん制か

E2D ステルス機見つける能力/F35B レーダーから隠れて任務

 米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)を母港とする原子力空母「ロナルド・レーガン」艦載の新型早期警戒機E2Dの5機が今月初め、米海兵隊岩国基地(岩国市)に到着した。1月には米海兵隊の最新鋭ステルス戦闘機F35Bも岩国基地に配備された。なぜ岩国基地に最新鋭機が相次いで飛来するのか―。その背景には、南シナ海など広い地域の国際・軍事情勢への即応という同基地の新たな存在理由が見て取れる。(編集委員・山本浩司、写真も)

 E2Dは、現用E2Cの後継機。E2Cと外観はほぼ同じだが、機体上部のレーダーは「世界最高レベルの航空機搭載型」(到着した第125早期警戒飛行隊隊長のダニエル・プロハースカ中佐)という。在日米海軍関係者は明言を避けるが、米海軍協会ホームページは、E2Dにはステルス戦闘機を見つける能力があると紹介している。

 米海軍厚木基地(神奈川県綾瀬市、大和市)のE2C部隊と交代させる形で極東地域に初配備すると同時に、2日、岩国に直接飛来した。本来ならば厚木基地で訓練するが、日本政府によると、岩国で「配備前訓練」を2、3カ月間程度実施する。耳慣れない配備前訓練の理由を「同機を支援する施設が岩国にしか存在しないから」と説明する。

 配備前訓練を終了後、ほかの艦載機と共に空母ロナルド・レーガンと出港するものとみられ、7月以降に帰港した時点で岩国基地に配備となる。

 一方、ステルス戦闘機F35Bは垂直短距離離着陸が可能だ。米ミリタリータイムズ電子版によると、FA18ホーネット戦闘攻撃機、AV8Bハリアー攻撃機、EA6Bプラウラー電子戦機のそれぞれの機能を併せ持つという。

 岩国基地には1月26日までに計10機が到着し、FA18の12機と交代する。8月にはさらに6機が配備され、AV8Bの8機と交代し、岩国に海兵隊の電子戦機の配備はなくなる。

 それでは、なぜ最新鋭機2機種が岩国基地に集められたのか。答えは、ステルス機を見つけるE2D、レーダーから身を隠して任務を遂行するF35Bという両機の任務に見いだすことができる。

 両機を一緒に岩国に置けば新鋭機同士で「探す訓練と隠れる訓練」が実施できる。極東初配備のE2Dが母艦の空母出航までに極東唯一のステルス機との訓練を望むのは自然だ。

 岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会の坂本千尋事務局長は「岩国にしか存在しない施設とされるものは、建物などではなく、F35Bと考えて間違いない」とみる。

 在日米軍の動きはこれだけではない。在日米海軍は佐世保基地(長崎県佐世保市)の強襲揚陸艦を今秋、ボノム・リシャールからワプスに交代させる。

 昨年10月に在日米海軍司令部(神奈川県横須賀市)が発表した資料によると、ワプスの配備はF35Bを運用するためとある。同艦は日本配備前にレーダーや通信、戦闘システムの改良を行っており、「最も新しく有能な部隊」(同司令部)という。多目的に使えるF35Bを運用することで、ワプスは実質的に「日本を母港とする2隻目の空母」になることができる。

 米メディアはF35Bの岩国配備を「中国の動きに対応したもの」と表現する。南シナ海南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺で領有権を主張し、新型ステルス機の開発を進めている中国をけん制する後ろ盾として、米軍の最新の航空機や艦船が日本に集められたのだ。

 最新鋭機の配備と、今年後半から始まる空母艦載機(計61機)の移転で、岩国基地は約120機の航空機を擁する極東最大規模の即応基地へと変貌する。

 同会の坂本事務局長は「最新鋭2機種の配備と移転する艦載機に加えて、頻繁に飛来するオスプレイの存在も忘れてはならない。これからはインド、アジア、太平洋の広い地域で何かがあれば、岩国基地が関係してくる」と危惧している。

(2017年2月8日セレクト掲載)

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