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社説・コラム

社説 北朝鮮ミサイル発射 危険な挑発 許されない

 北朝鮮がまたも、弾道ミサイルを発射するという挑発行為に打って出た。

 安倍晋三首相とトランプ米大統領による首脳会談直後のタイミングである。両国をけん制する狙いがあったのは明らかだろう。ミサイル技術の向上を国際社会にアピールしたいという思惑も潜んでいるように見える。

 発射されたミサイルは約500キロ飛行し、朝鮮半島を横切って日本海に落下した。日本の排他的経済水域(EEZ)には達しなかったものの、極めて危険な挑発行為であることに変わりはない。

 弾道ミサイル技術を使ったあらゆる発射を禁じた国連安全保障理事会の決議に明白に違反していよう。断じて許すことはできない。

 北朝鮮は昨年1年間で、核実験を2回強行し、20発以上も弾道ミサイルの発射を繰り返してきた。ところが、昨年10月以降は表立った軍事挑発は影を潜め、控えていたように映る。

 トランプ氏は激戦を制した大統領選で、北朝鮮との対話や在韓米軍の撤収の可能性に言及していた。オバマ政権から続く北朝鮮への「敵視政策」が転換する可能性も含め、新政権の新たな東アジア政策を見極めようとしていたのだろうか。

 しかし新政権が発足すると、直後にマティス国防長官を日韓両国に派遣し、日米韓が連携して北朝鮮に対処する方針を確認。日米首脳会談でも、北朝鮮に核・ミサイル開発の放棄を要求することで一致した。

 米国の反応を試すつもりなのかもしれない。

 北朝鮮の主張通り、固体燃料を利用した新型の中距離弾道ミサイルの可能性が高いと韓国軍も判断している。大陸間弾道ミサイル(ICBM)に使うエンジン性能を試験したとの見方も一定の説得力があろう。

 一方でICBMの開発までには「相当な時間が必要」とみる専門家もいるが、北朝鮮の技術を侮ってはなるまい。ミサイル戦力の多様化を図っているのは確実だ。脅威は一段と高まり深刻さが増したと言える。

 日米韓3カ国の要請を受け、国連安保理は緊急会合を開催する運びになった。依然として北朝鮮への影響力を持つ中国の役割も問われよう。

 北朝鮮を巡っては、安保理は昨年3月と11月に制裁決議を採択している。北朝鮮の主要な輸出品である石炭の取引に上限を設けるなど、厳しい経済制裁を科したが、今のところ実効性を確保できていない。

 安保理の委員会で制裁の違反状況を調べる専門家パネルの最新の報告では、エジプトに寄港した船舶から大量の北朝鮮製武器が見つかり、軍事的な協力関係にあるシリアなどに輸出されていた可能性が高いという。国連加盟国による制裁履行が不十分で、北朝鮮による大規模な武器取引が依然として続いている実態が明らかになった。

 まだ「抜け道」を防ぐ手だてはあるはずだ。北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源を断つために国際社会が歩調をどうそろえていくかが問われている。

 北朝鮮の核・ミサイルは今や米国本土をも脅威にさらそうとしている。トランプ大統領がどう向き合うかは不透明だが、粘り強い対話を第一に対応を練り直したい。

(2017年2月14日朝刊掲載)

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