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連載・特集

[Peaceあすへのバトン] 若手アーティスト集団「Project NOW!」代表・安彦恵里香さん 考え促す力 芸術に存在

 「核兵器廃絶」という言葉は、人の思考を停止させます。「核兵器は悪」とするだけでは解決しません。核兵器そのものに意志はなく、造るのも使うのも人間だから。本当に大切なのは実現するにはどうすればいいか、私たちが考えること。アートは人にそう促す可能性があると感じます。

 ものづくりの家庭に生まれた私が「世界の不条理」に関心を持つようになったきっかけは、高校生の時。テレビで、パレスチナ人の親子がイスラエル軍の銃撃を受け殺される映像を見て、憤りが湧きました。

 「なんで」。父に尋ねました。「仕方ないこと」との答えに頭の中は混乱。親子が理由なく命を奪われた悲しさを、なぜなかったことにできるのか。しかし当時は、違和感は心の片隅に置いたまま、やり過ごすしかありませんでした。

 高校を卒業して実家の工場や不動産会社で働きましたが、24歳の時、転機を迎えました。「このまま年を取るのかな」と頭をかすめた頃。思い切って仕事を辞め非政府組織(NGO)ピースボート(東京)が主催する船旅に参加しました。

 旅の途中、パレスチナ人の男性と話す機会がありました。高校生の時に見た映像がフラッシュバック。過酷な状況でも優しく接する男性に涙が出ました。この人のために何かしたい―。男性と引き合わせてくれたピースボートのスタッフになろうと決めました。

 ピースボートの広島事務所にいた2007年に会ったスティーブン(前広島平和文化センター理事長のリーパーさん)は気さくで、私の「広島の父」。5年間スタッフを務めた後、(市民団体主導の)「Yes!キャンペーン」に取り組んだのもスティーブンの誘いがあったから。20年までの核兵器廃絶への道のりを描いたヒロシマ・ナガサキ議定書に賛同を呼び掛け、市民の力を実感しました。

 「Project NOW!」は、若手アーティストと「核兵器と自分」をテーマにした絵本を11年に作る時、結成しました。掲載作品を募ると85点も集まりました。アートには、知って調べて考えさせる力があると実感しました。徹夜してでも作るのが面白く、駆け抜けた時期です。

 今、平和を学びに広島へ訪れた人と、地元住民とが話し合えるブックカフェを作れないか計画中です。場所は平和記念公園に近い中区土橋町。インプットできてもアウトプットする場がないのが現状です。「Hiroshima」の意義を再認識し合う場をつくるのが目標です。(文・山本祐司、撮影・今田豊)

あびこ・えりか
 茨城県谷和原(やわら)村(現つくばみらい市)出身。高校卒業後、会社員を経て2003年、ピースボートの旅に参加、平和に関心を深める。11年「Project NOW!」をつくり、アートで核問題を考える活動を開始。広島市中区在住。

(2017年2月14日朝刊掲載)

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