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原爆後の演奏会 たどる 広島のNPO、証言集め

 原爆の焼け跡が残る広島市内で奏でられたシューベルトの交響曲「未完成」が市民を勇気づけた―。広島市中区のNPO法人「音楽は平和を運ぶ」は、メンバーの記憶に残る演奏会を広島の音楽史の一ページとして語り継ごうと、当時の聴衆や関係者からの証言集めを始める。

 交響曲の演奏は、戦後の広島で初めてだった可能性もある。兄と一緒に聴いたという同法人の松尾康二理事長(79)=カルビー相談役=の記憶では、会場は広島大の前身の一つ、旧制広島高等学校の講堂(現南区)で、爆風で窓ガラスが割れたままだった。

 演奏者は中年の男性を中心に30人ぐらい。上手とは言えなかったが「死の静寂を連想させる冒頭と明るい主旋律の対比が、焼け跡から立ち上がる広島を連想させ、子どもながらに深い感動を覚えた」と回想する。

 戦後の混乱期で、当時の新聞にも記述が見当たらなかったため、市民から情報を募ることにした。

 「どんな思いや経緯で演奏会が開かれたのか、演奏者の家族や聴衆の記憶があるうちに記録したい。クラシック音楽の価値を見直すきっかけにもなればいい」と松尾さん。集まった証言は何らかの形で公表する予定という。同法人Tel082(247)8604。(馬場洋太)

(2017年2月15日朝刊掲載)

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