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[あしたを紡ぐ] 被爆70年超 今も新事実 原爆資料館 米で未確認写真発掘

 原爆資料館(広島市中区)が1月、原爆に関する写真約2100点を米国で入手したと発表した。「きのこ雲」や市街地の空撮など、同館がこれまで持っていなかったカットが含まれる。渡米調査をした同館の学芸員、小山亮さん(36)は「被爆70年が過ぎた今でも新たな発見がある。発掘を続けたい」と力を込める。

 昨年11月下旬~12月上旬に約2週間、初めて調査対象とした米国議会図書館など3館を巡った。事前に趣旨を伝えて訪れると、職員が大量の写真を箱に入れて運んできた。接写したり、スキャナーで読み込んだりする作業を黙々と続けた。

 「これは見たことがないなあ」。何度もつぶやいた。廃虚となった吉島地区(現中区)の上空から北方面をとらえた空撮、原爆開発の「マンハッタン計画」の関係者が写った一枚…。「9割方は初めて見る写真。収穫があり、とりあえずほっとした」と振り返る。

 北海道出身。東京の大学で近現代史を研究する傍ら、東京大空襲がテーマの戦災資料センター(江東区)で働いた。戦後70年近くになって寄贈された、空襲時の写真の分析を担当。学校や神社などの被害が写り、無差別爆撃だったと示す発見があった。

 原爆資料館には、求人に応じて2015年4月に就職。16年5月に来館したオバマ米大統領(当時)が残した折り鶴の展示などに携わった。「注目度が高く、責任の大きさを感じる」。米国3館での調査も、経歴などを踏まえて任された。

 帰国後は、学芸員の落葉裕信さん(39)、共に渡米した職員の中西利恵さん(43)と一緒に写真の分析を続けている。所蔵済みの写真や文献と突き合わせ、撮影時期や場所を推定。作業を終えた10点をホームページで公開した。

 今回、公的な施設を対象とした調査で一定の成果があった。小山さんは、個人所有を含めると表に出ていない写真はさらにあるはずだと考えている。「開拓の余地はあると思う。1945年8月6日の広島で何があったのか、少しでも迫りたい」(長久豪佑)

(2017年2月15日セレクト掲載)

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