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被爆2世きょう集団提訴 広島 国に援護求める

 被爆2世が、広島地裁に17日、長崎地裁に20日、国に援護を求める訴訟をそれぞれ起こす。1970年代から国に対策を求め続けてきたが、かなわず、初の集団提訴に踏み切る。運動をけん引してきた全国被爆二世団体連絡協議会(二世協)の平野克博事務局長(58)=廿日市市=は「常に健康不安を抱える2世の現状などを訴えたい」と力を込める。(有岡英俊)

 2009年に肺の病気で亡くなった平野さんの母フクエさん=当時(84)=は20歳で入市被爆。広島の惨状を語ることはなかった。被爆2世であることを強く意識したのは04年。韓国の被爆者と交流するため現地を訪れ、被爆で体調を崩し、貧しい生活を送る高齢男性の体験を聞いたことだった。

 当時、在外被爆者は被爆者健康手帳を居住地で申請できなかった。「国の援護の対象から外れた2世の実態と重なった」と振り返る。同じ2世のいとこは30代半ばに白血病で急死していた。「原爆のせいではないのか。国の対策は十分なのか」。この思いに突き動かされ06年、二世協の事務局長に就いた。

 全国の2世たちは1973年から国会議員や国に働き掛け、被爆者援護法の被爆2、3世への適用を訴えてきた。しかし、認められたのは、年1回の健康診断だけ。がん検診は含まれていない。

 周囲には、がんを発症し差別を受ける2世がいる。発がんリスクが高いとの指摘もある。二世協は14年から弁護士を交えた学習会を開いて訴訟を検討。原爆投下から70年以上がたち、2世も年を重ねて健康不安が増す中、改めて連帯感を高めようと提訴を決めた。「放射線の影響を否定できない限り、国は対策を講じる必要がある」。裁判を通じ、2世の機運をさらに高める決意だ。

被爆2世の集団訴訟
 広島地裁には22人が17日、長崎地裁に25人が20日に提訴する。訴状によると、原爆による放射線被害の遺伝的影響の可能性があるのに国は十分な援護策を講じず、精神的苦痛を強いられたと主張している。原告1人当たり10万円の慰謝料を求めている。

(2017年2月17日朝刊掲載)

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