『潮流』 平成という時代
17年2月20日
■論説副主幹・岩崎誠
柴門(さいもん)ふみさんの人気漫画「東京ラブストーリー」の続編が刊行された。懐かしさにすぐさま買い求めた。
自由奔放な女性「リカ」と優柔不断な「カンチ」の恋物語。平成の幕開けと前後して話題となり、ドラマ化で若者にブームを巻き起こした。「24時間好きって言ってて」の名せりふも。時はバブル末期、まだ街に元気があふれていた。
新作は、別離から25年後の再会を描く。それぞれ家族を守り、ささやかな幸せを大切にする「おじさん、おばさん」に落ち着いていたことにほっとした。
同時に平成という激動の時代を思い返した。バブル崩壊とデフレ。政権交代の繰り返し。冷戦崩壊とグローバル化、激変する安全保障環境。ネット普及とIT社会。地方の疲弊。災害の多発と3・11…。報道に身を置くためか、気を休める暇がなかった気がする。
いま好むと好まざるにかかわらず、平成の終わりを意識せざるを得ない。歴史社会学者の小熊英二氏の編著による「平成史」(河出ブックス)という論集が既に出ている。政治経済をはじめ多様な視点で時代の意味を切り取るが、その中で小熊氏は言う。昭和と違って何が時代を代表するかの共通了解は難しい、と。
平成が後世、より暗い時代への岐路だったと評されるのか。あるいは逆か。今のところ一人一人が生きざまの記憶とも重ね合わせ、振り返るしかない。
そういえば平成の世に生まれ、人気を博した北九州市のスペースワールドが、この年末で閉園することも決まった。昭和の重厚長大を象徴した製鉄所の跡地をテーマパークに活用する発想とその結末が物語るものは、いかにも深い。
この30年近くを見つめ直したくなるニュースは今後も続くだろう。新元号を先取りした議論もあるが、その前に読者とともに考えるべきは多いと自戒する。
(2017年2月18日朝刊掲載)
柴門(さいもん)ふみさんの人気漫画「東京ラブストーリー」の続編が刊行された。懐かしさにすぐさま買い求めた。
自由奔放な女性「リカ」と優柔不断な「カンチ」の恋物語。平成の幕開けと前後して話題となり、ドラマ化で若者にブームを巻き起こした。「24時間好きって言ってて」の名せりふも。時はバブル末期、まだ街に元気があふれていた。
新作は、別離から25年後の再会を描く。それぞれ家族を守り、ささやかな幸せを大切にする「おじさん、おばさん」に落ち着いていたことにほっとした。
同時に平成という激動の時代を思い返した。バブル崩壊とデフレ。政権交代の繰り返し。冷戦崩壊とグローバル化、激変する安全保障環境。ネット普及とIT社会。地方の疲弊。災害の多発と3・11…。報道に身を置くためか、気を休める暇がなかった気がする。
いま好むと好まざるにかかわらず、平成の終わりを意識せざるを得ない。歴史社会学者の小熊英二氏の編著による「平成史」(河出ブックス)という論集が既に出ている。政治経済をはじめ多様な視点で時代の意味を切り取るが、その中で小熊氏は言う。昭和と違って何が時代を代表するかの共通了解は難しい、と。
平成が後世、より暗い時代への岐路だったと評されるのか。あるいは逆か。今のところ一人一人が生きざまの記憶とも重ね合わせ、振り返るしかない。
そういえば平成の世に生まれ、人気を博した北九州市のスペースワールドが、この年末で閉園することも決まった。昭和の重厚長大を象徴した製鉄所の跡地をテーマパークに活用する発想とその結末が物語るものは、いかにも深い。
この30年近くを見つめ直したくなるニュースは今後も続くだろう。新元号を先取りした議論もあるが、その前に読者とともに考えるべきは多いと自戒する。
(2017年2月18日朝刊掲載)