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社説・コラム

『記者縦横』 シリアの子受難 胸痛む

■ヒロシマ平和メディアセンター・二井理江

 日本に住むそのシリア人男性は、自身のインタビュー記事が新聞に出るかもしれないことを、とても心配していた。「日本にシリアの大使館がある。もし政府への批判が新聞に載ったら怖い」と言う。本国には家族や親戚もいる。身の危険を感じているのだ。

 中高生の中国新聞ジュニアライターが取材、記事を書いている月1回の特集面「ピース・シーズ」。2月のテーマに、遠い世界であるシリアの現状、特に同世代について知りたいと「シリアの子どもたち」を選んだ。現地には行けないが、関係者を通じて話を聞けないか。人づてに探し出したのが、前述の男性だった。

 アサド独裁政権下で生活してきた人は、個人の思想・信条を表に出しにくい。それは、異国の地にいても同じである。記事は匿名で顔写真も載せないという条件で、何とか取材できた。

 シリア国内で避難した人、今も危険地域にいる人、国外に逃れた人。いずれも子どもたちは精神的に不安定になる。学校に行けない、行っても満足に授業を受けられない。命の危険にさらされる子もいる。

 政府軍と反政府武装勢力との戦闘に過激派組織「イスラム国」(IS)が加わり泥沼化。米ロの代理戦争の様相もあり、難民問題は深刻さを増している。「子どもたちには関係ない。責任もない」。取材で聞いた言葉が心に刺さる。解決への力にはならないが、まずは子どもたちにかばんや冬服を送ろう。ジュニアライターと話し合って、そう決めた。

(2017年2月24日朝刊掲載)

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