×

ニュース

ひろしまハウス支援を カンボジアの平和交流施設 広島のフリーアナ久保田さん現地訪問

資金難や通う子ども減 厳しい現状伝える

 1994年の広島アジア競技大会にカンボジアは内戦を乗り越えて参加した。それをきっかけに首都プノンペンに建てられた平和のための交流施設が「ひろしまハウス」である。この1月末、フリーアナウンサーの久保田夏菜さん(30)=広島市西区=が3度目の訪問を果たした。「被爆地広島の名前が付くこの施設を広く知ってもらいたい」。資金難の現状や教育を満足に受けられない子どもたちの姿を取材で目の当たりにし、協力の輪を広げようと訴えている。(山本祐司)

 「こんにちは」「元気ですか」。自らあいさつする子どもの明るさに、久保田さんは驚いた。公用語のクメール語や英語、日本語を学ぶ時も、子どもが「顔がゆがむ」ほど大きな声で発音し、活気にあふれた。持参した節分用の鬼の面でも楽しく遊んだ。

 ハウスはアジア大会でカンボジア選手と交流した広島市民の熱意で2006年に完成した。NPO法人ひろしま・カンボジア市民交流会(中区)が運営する。貧しくて学校に通えない児童生徒を受け入れて無料で教育し、昼の給食を提供してきた。

 久保田さんによれば、前回訪れた1年前に恥ずかしがっていた子どもが積極的に変わったのは、昨年12月からハウスのマネジャーを担う西区出身の友広壮希(まさき)さん(25)の指導があったからだという。

 日本人で初めて常駐したスタッフ。カンボジアでプレーするプロサッカー選手の顔も持つ。空き時間にできることを探していた時、古里の名を冠したハウスが貧しい子どもたちの自立や就職に向けたサポートをしていることにも共鳴し、手伝い始めた。その一歩があいさつの徹底。子どもの名札や紹介用のプロフィルも作り、見学者に活動内容が伝わるよう工夫している。

 ただ課題も抱える。月約17万円かかる経費の当ては5月までしか見込めない。広島とカンボジアの多くの人たちの復興の願いが詰まったハウスを守っていくための手だてを、友広さんは思案しているそうだ。

 通う子の数もこの1年で半減した。親が仕事を失い家族で引っ越すか、子どもも働くためだ。カンボジアの義務教育は日本と同じ9年間だが、久保田さんは「継続して学ぶ厳しさを実感した」と顔を曇らせる。

 それは国全体の問題でもある。かつてポル・ポト政権下で多くの教育者が虐殺され、十分な教育を受けられなかった教員もいて、進級や進学に賄賂を要求することもあるという。貧困家庭は子どもになかなか教育を受けさせることもできない。ハウスに通うのは8~15歳だが、学ぶのは小学1~4年の内容。字が書けない12歳が来たこともある。

 久保田さんも今回、会員制交流サイト(SNS)で呼び掛け、給食費に充てる寄付金と鉛筆やノートなど文房具を集めて贈った。取材した内容は古巣の中国放送のニュース番組で既に放映されたが、「メディアに携わる人間として、これからも現状をしっかりと伝えたい」と力を込める。

(2017年3月6日朝刊掲載)

【編集部から】
 久保田さんが現地で撮影した写真13枚を掲載しています。写真はいずれも久保田さんから提供していただきました。

年別アーカイブ