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修学旅行生に折り鶴再生紙 平和願う輪つながって 再び千羽鶴に

 平和記念公園(広島市中区)にある「原爆の子の像」にささげられた折り鶴を折り紙に再生し、修学旅行で広島を訪れる児童や生徒に折り鶴を折って持参してもらう取り組みが始まった。被爆者で、紙器メーカーのトモエ(安佐南区)会長の高丸晃さん(74)をはじめ、大手企業3社が「広島や平和について、より深く思いをはせるきっかけにしてもらいたい」と、折り鶴の「循環」に挑んでいる。(奥田美奈子)

 新潟県長岡市立南中の2年生約140人が2月下旬、平和記念公園を訪れ、11センチ四方の「折り鶴再生おりがみ」で作った千羽鶴を像にささげた。大塚湧斗さん(14)は「折り鶴が再生されるたび、平和への思いが誰かにつながっていくと感じた」と話した。

 生徒たちは事前に、折り鶴に込められた思いや原爆の被害などについて学習。大矢慎一校長(57)は「再生した折り紙は、なぜ鶴を折るのか、なぜ広島を訪問するのかを考える良い材料になった」と評価する。

 高丸さんは3歳の時、爆心地から約2キロの広島市西区南観音町の自宅で被爆した。像のモデルとなった佐々木禎子さんとは同学年だ。広島市が2012年に無料で配布を始めた折り鶴を使い、名刺用の再生紙などを作っていたが、「使い道を広げたい」との思いが強かった。

 取引先にも協力を求めて用途を模索したところ、千羽鶴を折り紙へ戻すアイデアが浮上した。再生紙の生産は容器メーカーのクラウン・パッケージ(愛知県小牧市)に、裁断や折り紙への色付け工程は印刷などのコニカミノルタジャパン(東京)に協力してもらうことになった。

 修学旅行で広島を訪れる学校への働き掛けは、旅行会社の近畿日本ツーリスト(東京)が担う。トモエは展示期限を迎えた千羽鶴を受け取り、市内の障害者作業所で糸やホチキスの針などの異物を除去してもらう仲介をする。

 高丸さんは、昨年5月に広島を訪れたオバマ米大統領(当時)が鶴を折ったのを機に、折り鶴が世界に通用する平和のシンボルになってきたと感じている。「全国の子どもたちに循環の輪を広げ、平和を大切に思う心を育みたい」

(2017年3月7日朝刊掲載)

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