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丸木夫妻制作「原爆の図」 50~53年に巡回167回

 画家の丸木位里、俊夫妻が被爆者などを描いた「原爆の図」(全15部)の初期3部作が、完成直後の1950~53年に、少なくとも36都道府県で167回、展示されていたことが原爆の図丸木美術館(埼玉県東松山市)の調査で明らかになった。同図が終戦後の社会に与えた影響の大きさが裏付けられた。

 巡回展は労働組合や学生団体などが主催。丸木夫妻の回想から、広島市などで多数開催されたことが知られていたが、現存する記録が少なく、実態は不明だった。

 2008年、丸木美術館の岡村幸宣学芸員が丸木夫妻の旧アトリエから、ガリ版刷りの巡回展の記録集を発見。10年には、俊の出身地である北海道で大規模巡回展が開かれていた新事実を突き止めるなど、資料や証言の掘り起こしが進んだ。

 「原爆の図」は2組巡回していたことも判明。丸木夫妻は52年、サイズも構図も同じ3部作を控えのためにもう1組制作。現在、最初の3部作は丸木美術館が、後の再制作版は広島市現代美術館(南区)が所蔵している。

 中国地方では広島、呉、福山、岩国、松江、岡山、米子の各市などで計17回の開催が分かっている。岡村学芸員は「まだ記録が埋もれている可能性は高い。情報を寄せてほしい」と呼び掛けている。同館Tel0493(22)3266。(西村文)

(2012年7月31日朝刊掲載)

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