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首相官邸前など脱原発デモ参加者 6割「核廃絶 思いも強く」

 首相官邸前などの脱原発デモで声を上げる市民は、もうひとつの「核」の問題である核兵器廃絶をどう考えているのか―。東京・日比谷公園や国会周辺などで29日にあった大規模抗議行動に参加した50人に聞いた。福島第1原発事故後、約6割(31人)が、廃絶すべきという思いも強くなったと回答した。(岡田浩平、武河隆司)

 「原発事故で放射線被害の怖さを知り、同じ技術を使った核兵器をなくすべきだ、との気持ちは強まった」。茨城県石岡市の主婦小山律子さん(62)は言い切る。小山さんだけでなく、放射線の知識や原爆開発の歴史をインターネットや地域の学習会で学ぶなど、参加者の核問題への関心は広がりをみせる。

 被爆国が原発を受け入れてきた経緯に複雑な思いも。東京都狛江市の主婦小林佳容子さん(50)は19歳の時に広島市中区の原爆資料館を見学した。「核は許されないと知っていたのに、止めるためにこれまで何もしてこなかった」と悔いた。

 主催者は毎週金曜に官邸前で抗議活動を続ける「首都圏反原発連合」。労組中心の反核運動とは異なり、組織名入りの旗や抗議中のビラ配りの禁止を求めるなどして市民が参加しやすい雰囲気をつくる。埼玉県所沢市の自営業柳瀬治郎さん(39)は「インターネットが普及し、デモや集会に参加しやくなった」。ベビーカーも並び、会場内の家族向けエリアでは、人気アニメの音楽も響いた。

 特に子どもを持つ親の危機感は強い。川崎市川崎区の主婦土屋裕子さん(37)は長女(4)と参加し「放射線被害を子どもたちに残したくない。大人が行動しなければ」。

 では、核兵器廃絶へどう取り組むか。文京区の事務員梶原薫さん(36)は「原発を現実に止められたら、核兵器にもストップをかけられるのでは」と期待。埼玉県桶川市の団体職員重盛智さん(47)も「制御不能な核兵器も原発も駄目だと、連動して運動するのは十分可能だ」とみる。

 東京都町田市の高校1年鈴木岳志さん(16)は同級生ら5人と参加。「核兵器も原発も国が決める問題だからと流されるのではなく、自分の問題に引きつけて考えたい」と力を込めた。「一人一人が声を上げねば」と盛んになる脱原発のうねり。「核廃絶」へつながるか注目される。

(2012年7月31日朝刊掲載)

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