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社説・コラム

社説 北朝鮮の暴挙 国際的連携で包囲網を

 北朝鮮が発射した4発の弾道ミサイルは、外交面で強硬姿勢を示す米トランプ政権と、日本へのけん制が狙いだったようだ。有事に在日米軍基地への攻撃を担当する砲兵部隊が訓練で発射したと朝鮮中央通信がきのう報じた。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が立ち会ったというから、力の入れようがうかがえる。

 安倍晋三首相はトランプ米大統領との電話会談で、「新たな段階の脅威」との認識を確認し、緊密に協力する方針で一致した。トランプ氏は北朝鮮に対して「あらゆる選択肢」を検討しているという。ただ、武力で抑え込もうとの脅しは通用するのだろうか。

 日米韓の要請を受け、国連安全保障理事会は、きょう緊急会合を開く方向で調整している。ミサイル発射はいうまでもなく、弾道ミサイル技術を使ったあらゆる発射を禁じた安保理決議に反しているのは明らかだ。

 グテレス事務総長も「地域の平和と安定を著しく損なう」として非難する声明を出した。何よりも、国際社会が結束することが欠かせない。

 北朝鮮がこれほどミサイル発射や核実験を繰り返しているのは、経済制裁を科している安保理決議の実効性を見透かしてのことではないか。

 安保理の専門家パネルが公表した年次報告によれば、エジプト政府が昨年8月に拿捕(だほ)した貨物船から北朝鮮製の携行式ロケット弾3万発が押収された。北朝鮮の武器輸出は安保理決議で全面禁止されているにもかかわらずである。

 制裁を巧みに逃れて武器取引は続け、核・ミサイル開発の資金に充てている可能性がある。北朝鮮の制裁対象団体や銀行は海外の代理人を使って活動をしている。資金源を断つための経済的な封じ込めが、うまく機能していないといえそうだ。

 北朝鮮経済を支えてきた中国は、メンツをつぶされた格好だ。国会に当たる全国人民代表大会の開催中というタイミングでの発射だったからだ。中国商務省は先月、北朝鮮産の石炭の輸入を年末まで止めると発表している。それに対する反発もあったのだろう。だからといって制裁を緩めるべきではない。

 北朝鮮は、さらなる苦境に追い込まれている。金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件に絡み、駐マレーシア大使が国外追放になった。友好国との関係も悪化し、孤立は一層深まりそうだ。そんな今だからこそ、国際社会は包囲網を強めるべきだ。そうして初めて、経済的封じ込めは実効性を増す。

 気掛かりもある。米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」である。新たな段階となった脅威に対する防衛策として、韓国配備を開始したと米韓両軍がきのう発表した。日本も導入を検討しているが、高性能のレーダーが自国に及ぶとして、中国は強く反発している。国際社会が足並みをそろえられるか正念場だろう。

 被爆国の日本が安易に武力に頼ろうとすることにも疑問が残る。恐怖心をあおり、敵国の弾道ミサイル発射基地などを攻撃する「敵基地攻撃論」の再燃につなげるべきではない。冷静な対応も必要ではないか。

 北東アジアの非核化に向け、外交圧力と対話で北朝鮮を粘り強く説得する努力が求められている。

(2017年3月8日朝刊掲載)

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