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普天間移設 見通し焦点 米艦載機移転受け入れ判断 山口県・岩国市「残る前提条件」

 米海兵隊岩国基地(岩国市)へ空母艦載機61機が移転する計画を巡り、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設見通しが焦点となっている。「米軍再編はパッケージ」として沖縄の負担軽減も艦載機移転の目的としてきた山口県と岩国市は、この見通しが立つことを受け入れの前提条件に掲げる。沖縄県が国の進める名護市辺野古への移設に反対する中、岩国市は6月にも艦載機受け入れの最終判断をするとみられ、県市の対応が注目される。

分離認めぬ姿勢

 県はこれまで、①基地の今以上の機能強化は容認できない②夜間離発着訓練(NLP)の実施は容認できない③地元の意向尊重―を「基本姿勢」に提示。2010年には、④(新たな部隊配置など)これ以上の負担増は認めない⑤普天間移設の見通しが立たないうちに艦載機移転のみを切り離して進めることは認めない―との二つの「基本スタンス」も加えた。この五つが艦載機受け入れを判断する前提条件とする。

 条件追加の背景には、普天間の県外移設を掲げた民主党(現民進党)政権下(2009~12年)での日米ロードマップ(行程表)の一部見直しがある。06年当初のロードマップは「個別の再編案は統一的なパッケージ」と明記するが、政府は12年2月、在沖縄海兵隊のグアム移転を難航する普天間移設と切り離して進める方針を発表。こうした流れの中で、山口県は岩国基地が県外移設先となる懸念などから「パッケージ論」を堅持してきた。

沖縄県反対貫く

 現在の自民党政権は、辺野古への移設を「唯一の解決策」と強調。これに対し沖縄県は反対姿勢を貫く。辺野古埋め立てを巡る昨年12月の最高裁判決を受け、山口県は「国が工事を行う法的地位は確定した」と受け止める。ただ岩国市が現時点で艦載機移転を容認していないため、普天間移設の見通しは「見解を示す段階にない」との立場だ。

 一方で県は、受け入れ判断の前提条件とする基本姿勢(①~③)のうち、「地元の意向尊重」を除いてクリアできたとする。当初計画より移転機数が増えるなどして一部地域での騒音拡大を予測するが、移転前後で住民の生活環境は大きく悪化しないとして、「機能強化に当たらない」と判断した。

 「NLP実施は容認できない」についても、国が馬毛島(鹿児島県西之表島)の購入方針を示し、米軍が引き続き硫黄島(東京)で訓練すると確認できたとの見解を示す。基本スタンスの「これ以上の負担増」についても、現時点で新たな部隊再編案などはなく、事実上クリアしている。

 岩国市も同様の見解で、県市とも「普天間の移設見通し」が残る前提条件となっている。一方で同市は6月の市議会定例会で最終判断する見通しだ。

 辺野古移設に沖縄県が反対する現状について、県岩国基地対策室は「沖縄の負担軽減の重要性は理解しているが、基地を抱える自治体の状況はそれぞれ異なり見解を述べる立場にない」とする。(和多正憲)

<山口県と岩国市の艦載機移転受け入れ判断の前提条件>

①条件 岩国基地の今以上の機能強化は容認できない
 山口県・岩国市 移転前後で基地周辺住民の生活環境は全体として悪化せず、機能強化に当たらない

②条件 NLP実施は容認できない
 山口県・岩国市 国がNLPを含む陸上空母離着陸訓練(FCLP)建設候補地として、馬毛島を購入方針。暫定措置として、米国は引き続き硫黄島で訓練実施と確認

③条件 地元の意向を尊重する
 山口県 地元市長が現時点で容認していない

④条件 これ以上の負担増は認められない
 山口県 事実上クリアしているが、艦載機移転と合わせて判断する
 岩国市 負担増はなく、クリアしている

⑤条件 普天間飛行場移設の見通しが立たないうちに艦載機移転のみを切り離して進めることは認められない
 山口県 地元市長が容認しておらず、見解を示す段階にない。艦載機移転と合わせて判断する
 岩国市 一定の区切りを付けないといけない時点で判断する

米軍再編ロードマップ
 日米両政府が2006年に合意した在日米軍基地の返還や移設に関する行程表。普天間飛行場の名護市辺野古移設や米空母艦載機の厚木基地(神奈川県)から岩国基地への移転を「14年まで」としていたが、いずれも予定通り完了していない。艦載機移転について日本政府は13年1月、基地内の家族住宅などの工事の遅れを理由に「17年ごろまで」への変更を伝達。ことし1月、米軍の計画として17年7月以降の移転開始を山口県と岩国市に伝えた。

(2017年3月23日朝刊掲載)

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