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報道写真家・福島菊次郎さん半生記 公開

 戦後日本の在り方をレンズを通して問い続ける柳井市の報道写真家福島菊次郎さん(91)。その波乱に満ちた人生を追うドキュメンタリー映画「ニッポンの嘘(うそ)」が4日、全国では広島市中区の八丁座と東京都内で公開される。被爆、公害、安保、原発…。多くの問題に権力側の「嘘」をかぎ取る福島さん。自らに正直に、反権力を貫く姿勢が、置き去られた課題を照らし出す。(守田靖)

 下松市出身の福島さん。戦時中に召集され1945年8月1日に広島市から宮崎県に部隊が移動。被爆を免れた。戦後、実相を知り「広島が不条理な、我慢のならない目に遭っている」と憤り、被爆者の中村杉松さんを撮り始めた。

 撮影手法はともすれば過激だ。憲法上は「戦力を持たない」はずの日本で、自衛隊に潜入取材し、雑誌で兵器の実態を告発。防衛庁(当時)から呼び出され「事前検閲の約束だった。だました」と激怒される。それに対し「憲法があるのに国民を先にだましたのはあなた方だ。言う資格があるのか」と迫る。この報道後、暴漢に襲われたり、自宅に放火されたりもした。

 映画の中で福島さんは語る。「権力が法を犯した時は、カメラマンも法を犯してでも撮影し、告発しなければ。中立性なんて言うからいいドキュメンタリーができない」

 福島さんが写すのは、問題を隠し、問おうとしない国や国民の体質と、そのはざまで苦しむ人たち。映画の試写を見て、自らの仕事について「戦後日本の中で一つの役割を果たせたかな」。一方で「67年たっても被爆者の問題を裁判で争っている。何も解決していない」と嘆く。

 昨年は90歳でカメラを手に、福島原発事故で住民が避難した町へ。「真実を問わないと社会は変わらない。(いじめ問題も含め)大人が嘘を言う社会を子どもたちはどうみるだろうか」。テレビドキュメンタリーの秀作が多い長谷川三郎監督のデビュー作。

(2012年8月4日朝刊掲載)

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