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核禁止交渉 日本不参加 岸田外相「対立招く」 軍縮大使が反対演説

 「核兵器禁止条約」の制定に向け、米ニューヨークの国連本部で27日(日本時間同日深夜)に始まった会議で、条約を推進するオーストリアなどの非核保有国からは、核兵器の非人道性を理由に、法的に禁止する必要性を訴える意見が相次いだ。

 政府代表による演説で、日本の高見沢将林軍縮大使は、禁止条約は安全保障問題の解決に結び付かないと主張。一方、オーストリアは「広島、長崎の画像を見て、被爆者の声を聞いた。法的禁止を定めた上で保有国と共に核兵器を廃絶しよう」と強調。メキシコは各地にある非核兵器地帯を念頭に「核兵器のない世界は夢ではない」と訴えた。

 会議の議長にホワイト駐ジュネーブ国際機関代表部大使を送り出した中米コスタリカのゴンサレス外相は、国際社会が条約で生物兵器や化学兵器を禁止してきた点を挙げ「禁じられた兵器がその後途絶えることは、歴史が示している」と指摘。保有国の不参加を意識しつつも「重要なのは、私たちがここに集ったことと最初の一歩を踏み出すことだ」と述べた。

 初日は約30人が演説。2日目となる28日以降、最終日の31日まで条約の前文・目的や禁止事項を順次取り上げ、意見を交わす。(ニューヨーク発 水川恭輔)

 政府は28日、米ニューヨークの国連本部で開かれている「核兵器禁止条約」の制定交渉会議への不参加を表明した。岸田文雄外相は「核兵器のない世界に資さないのみならず、核兵器保有国と非保有国の対立を一層深め、逆効果になりかねない」と説明。核兵器を禁止し、全廃するための初の条約交渉に、被爆国が加わらない事態となった。

 会議初日の27日(日本時間28日未明)、実質的な交渉入りを前に、日本政府代表として高見沢将林軍縮大使が演説。核兵器の削減は、保有国と非保有国の分断を避けつつ段階的に進めるべきだとの従来の主張を強調し、会議について「建設的かつ誠実に参加するのは困難」との見方を示した。北朝鮮の核実験やミサイル発射にも触れ、「禁止条約が作られても、北朝鮮の脅威といった安全保障問題の解決に結び付くと思えない」と訴えた。

 これを受け、岸田氏は首相官邸で記者団に対し「日本として主張を述べたが、会議には保有国の出席は一国もなかった。交渉には参加しないことにした」と説明。広島、長崎の両被爆地から繰り返し交渉参加を要請されていただけに「被爆者の方々の思いは貴重で重たい」と述べつつも、「政府として現実的な結果を出すためにはどうあるべきか真剣に検討した」と理解を求めた。

 今回の会期は31日までで、禁止事項などについて意見を交わす。推進各国は6~7月の次回会期までに草案をまとめたい考え。

 非政府組織(NGO)の集計によると、27日の会合には日本を含む約120の国・地域が出席した。米英仏中ロの核保有五大国のほかインド、パキスタン、北朝鮮なども交渉に参加しなかった。米国の「核の傘」の下にある北大西洋条約機構(NATO)諸国も大半が交渉入りに反対している。

 会議の開幕に合わせ、米国のニッキー・ヘイリー国連大使が国連内で記者会見し、交渉に反対する声明を発表。「北朝鮮が条約に同意すると誰が信じるのか。われわれは現実的にならなければいけない」と訴えた。英仏を含む約20カ国の代表者も同席した。(田中美千子、ニューヨーク水川恭輔)

(2017年3月29日朝刊掲載)

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