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【解説】核禁止交渉 日本不参加 被爆国深まるジレンマ

 「核兵器禁止条約」の制定交渉会議初日に演説しながら、交渉に参加しない。この日本政府の分かりにくい対応は「唯一の戦争被爆国」をうたいながら、米国の「核の傘」に頼るジレンマにさらに深く陥りつつある現状をさらけ出した。

 核・ミサイル開発を続ける北朝鮮をはじめ安全保障環境の悪化を理由に、交渉参加に反対する声は政府内で日増しに強まっていた。昨年の国連総会では交渉開始決議に反対した。それでもなお会議に軍縮大使を派遣して主張だけは伝え、岸田文雄外相の不参加表明は会議開始後。核兵器の非合法化を目指す国内外の世論との間で被爆国は揺れ続けていたようだ。

 交渉参加に意欲を示していた岸田氏は28日、核拡散防止条約(NPT)など核保有国と非保有国が参加する枠組みに触れ「辛抱強く努力することこそ、現実的であり核兵器のない世界への最短の道だと信じる」と語った。ただ、非保有国はその歩みが遅いがために非合法化の動きを強め、被爆者たちも大きな期待を寄せる。「橋渡し役」を自任する日本は最終的に保有国側へ歩み寄り、非核外交のハードルを上げた。(田中美千子)

(2017年3月29日朝刊掲載)

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